第四話「おまじない」


玄関の掃き掃除をしていた未来は

昨日の春日が頭から離れなかった。

(やっぱりエンマ大王のこと

好きなのかな?

それに…)

先日のデーモンオクレの非難も

未来の中でくすぶっていた。

「未来?未来!」

ぼーっと考えていると

ぬらりに名前を呼ばれた。

「ぬらり?どうしたの?」

急に現れたぬらりに

意識が現実に戻っていく。

「どうしたの?ではない。

未来が上の空だと

春日が心配そうに

私に教えてきたぞ」

「春日が?

大変!仕事しなくちゃ!」

そう言って未来は掃除を再開した。

「未来…」

「ん?」

未来はほうきを動かしながら

返事をした。

すると唇に温かい感触があった。

ぬらりの唇だった。

(え?)

それは一瞬で

すぐにぬらりは離れたが

未来はかたまったままだった。

「まじないだ」

ぬらりは微笑んだ。

「おまじない?」

「ああ。

未来が元気になるように…」

「わ、私は元気だよ!

それより…」

生まれて初めてのキスに

未来は恥ずかしくなり

下を向くしかなかった。

「もしかして初めてだったのか?」

「う、うん」

「それはよかった」

安心したぬらりの声に

未来は顔をあげた。

「よかった?」

「ああ。

他の誰かじゃなくて私で」

ぬらりはそう言ったが

目が泳いでいた。

(ぬらりも恥ずかしいのかな?)

「未来様〜?」

「あ!春日!

掃除しなきゃ!」

慌てて未来はほうきを握り締めた。

「じゃあ、私はこれで」

ぬらりも急いでその場を去った。

「未来様

どこかお悪いのですか?」

やって来た春日は心配そうだった。

「だ、大丈夫だよ!

すぐに終わらせるね!」

未来は春日の顔を見れなかった。

そんなはずないのに

唇にあとがついている気がして

なにより、ぬらりの感触が残っていて

未来は赤面した。


to be continued







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