プロローグ
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思ってもいなかった。
俺の事を誰一人として
覚えてないなんて…
【忘れ去られた記憶】
賢者の石以外で元に戻る方法を見付けた俺とアルは戻る時間も惜しくてセントラルの宿を借りていた。
俺はアルのためだったら例え、命でも何の代価でも差し出すつもりだった。
『あんたの記憶を貰うよ。愚かな錬金術師。』
記憶を貰うその言葉に俺は自分の記憶が無くなるんだと思い俺は頷いた。
アル達には俺の事を馬鹿な奴と、怒って悲しむかもしれない。
けど俺は実の弟、アルに幸せになって欲しいんだ。
だから、ごめん。
何も相談しなくて、
俺無駄な心配とかかけたくなかったんだ。
大佐……ロイ大好きだった。
これからも、好きだから。
だから忘れても……
どうか
悲しまないで。
「ん…っ」
気が付き、頭がスッキリしてきた時、手足は元に戻っている事に、俺の記憶がある事に気が付いた。
「何でだよ。何で記憶があるだよ!!」
嬉しい筈がエドは取り戻した左手を握り締め、地面に叩き付けた。
手の痛みに俺は唇を噛み締め、アルの方を向いた。
そこには成長したアルの姿があった。
アルの元までまだ上手く動かない足で近寄り、頬に触れる。
暖かい体温に自然と涙が流れた。
その涙は頬を伝い、アルに落ちる。
俺の記憶があるのなら皆から俺の記憶がないかもしれない。そう良く回る頭が理解した時、俺はアルから手を放して後ずさる。
「アル、たった一人の大事な弟。」
さようなら。そう言うと、エドは旅の時に良く使った古びた鞄を持ち、机に置いてあった銀時計をポケットに入れると上手く動かない足を引きずり宿を出た。
当ても無く宿を出たエドは降って来た雨にフッと微笑みを浮かべ裏路地に入るとおもっきり泣いた。
今まで溜めていた涙を全部出すくらいに。
泣き叫んだ。
泣き声が止んだ時。
エドの意識は切れ、その場に倒れていた。
2010. 完成
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