さて困った
突然跡部邸に身を寄せることとなった私
執事の斎藤さんを呼び戻して必死で客間を用意してくれと頼んだものの
『お二人様は許嫁同士ですので、こちらの方が親交を深めるためにもよろしいかという両家の結論でございます』
と有無を言わさず私は跡部景吾の部屋で寝泊まりすることになってしまった
ブーブー言いながらも抗いようがないことを悟った私たちは夜も遅くなってきたこともあり、就寝準備をしていた
お風呂は家で済ませてきていたので今日は入浴に関する問題はなかった
ってゆーか、部屋にお風呂ついてるとか何事よ
で、問題はアレだ
「お前はその辺で寝ろ」
「はぁー!?女の子にその辺で寝ろとか普通言う!?」
そう、私がどこで寝るかということ
「せめて来客用の布団とか無いの?」
「客間に備え付けのベッド以外はない」
布団ぐらい無いのかよ!
跡部景吾はというと、5人ぐらい寝れるんじゃないの?という程大きなキングサイズのベッドに腰掛けていた
私をその辺で寝かせて自分はそんなに豪華なベッドで寝るつもりかコイツは
「私もそっちで寝たい」
ベッドを指差してそう訴えるも鼻でフンと笑われる
「いきなり家に押し掛けといてワガママなやつだな、あーん?」
「う…そ、それは不可抗力だもん!」
確かに祖父母が留守にしている間身を寄せさせてもらってはいるものの私だって好き好んでこんなところにいる訳ではない
「ってかさ、そんだけ大きかったら端と端で寝れるんじゃない?」
「はあ?」
そうだよ、例え同じベッドで寝ることになろうともこんなに大きかったら問題ない、うん
「よし、けってーい」
勝手に自分の中で解決して私は跡部景吾が腰掛けているのと反対側にモソモソと移動した
「おまっ…一緒に寝るつもりか」
私の様子に少し焦ったように跡部景吾が言った
「あ、もしかして変なこと考えた?そうだよねやっぱりダメだよね男は皆狼だもんね…」
私が大袈裟に自分の体を押さえると跡部景吾は不快そうな顔をした
「俺様がお前みたいな女に欲情するとでも思ってるのか?あーん?」
むかっ
いちいちムカつくなコイツは…
だけど私の目下の目標はこのベッドで寝ることだ
完全に私の頭の中はフカフカなベッドでいっぱいで
「じゃあ問題ないよね。お互い何も意識してない、端と端で寝れば密着もしない。うん、完璧じゃん!あ、私寝相はいい方だから安心して」
勝手に結論を下した私は、ガバッと布団に潜り込んだ
「ちっ」
跡部景吾は納得していないようだったが知らなーい
しばらくして布団の擦れる音がして奴も布団に入ったことが分かる
「…おやすみー」
「…ふん」
このベッドの反対側にアイツがいるのか…
なんか、変な感じ
そんなことをぼんやりと考えながら私は眠りに落ちていった
It is quite a strange story.
(それはまったく奇妙な話だ)
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夜風にまたがるニルバーナ
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