突然二人きりにされてしまい、私は窺うように跡部景吾の方を盗み見た
すると奴は小さく息を吐くと私と向かい合った
「おい」
「…な、なによ」
「お前、西園寺沙織だな」
「えっ!何で私の名前知ってるの!?」
まさかこいつが私のことを知っていたなんて思いもしなかったので私はすっとんきょうな声をあげてしまった
「俺様は全校生徒の顔と名前は完璧に覚えている」
ぐはっ
トントンと自分の頭をつつきながら誇らしげにそう言い放った跡部景吾
全校生徒って何人いると思ってんの!?
ほんと何なのよこいつ…
私が1人で頭を抱えていると
「もしかして西園寺というのは西園寺財閥のことか?」
跡部景吾の口から出た言葉に私はわずかに肩が震えた
「…そう、だったら何?」
私がぶっきらぼうにそう答えるとどこか納得したように跡部景吾は自分の顔を手で押さえた
「なるほど、それならまだ納得のいく話じゃねーの」
周りには伏せているけど、私の実家は跡部財閥には及ばないものの世界的に力を持つ西園寺財閥である
私はいわゆるお嬢様というわけだ
だけど
私は使用人にあれこれ世話をされたりSPに警護されたりといった自由の制限された窮屈な生活は真っ平ごめんだった
だから、海外で働いている両親のもとを離れて日本で祖父母と平凡なくらしをしている
もちろんある程度の教養とマナーは勉強する条件で
「私は、西園寺財閥の一人娘だけど…敷かれたレールの上を進むつもりはないわ」
私はそう言い放つと跡部景吾をキッと睨み付けた
「お前がそこまで頑なに家のことを拒むなんざ俺には分からねぇ話だな」
…そうでしょうとも
跡部財閥の力を存分に利用して何不自由ない生活をしているアンタには
─だから、気にくわないんだ
「今回の話も私は素直に受けるつもりはないから」
「フン、お前の考えには納得しかねるが…その点においては同意だな」
私達はしばらく睨み合い、私は跡部邸を後にした
あんたが許嫁だなんて、絶対認めない!
Who do you think you are?
(自分が何さまだと思ってるんだ)
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夜風にまたがるニルバーナ
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