「あー…会いたいなー」


私は教室の机に突っ伏して小さく呟いた



実家に帰ってからというもの…

全然跡部に会わない



そりゃ跡部の家にいたときは少なくとも朝晩はずっと一緒だったわけだけど


学校で会えないとほんと1日会えない




うぅ…跡部が足りないよ…




「ウジウジ鬱陶しい」

「いたぁっ!?」


うんうん唸っていると、例のごとく彩花の空手チョップが脳天に落ちてきた


「ねえ、私思ったんだけどさ」


頭を押さえて怨めしげに彩花の方を睨むもヤツは素知らぬ顔で空いていた私の前の席に座った


「…なによ」

「沙織、告白しないの?」

「こっ!?ここここここ告白っ!?」

「うるさい」

「いだっ!」


予想外のワードに思わず大きな声を出してしまい、再び彩花の鉄拳をくらう


ってゆーか、こここ告白って…!


「か、考えもしなかった…」

「まじでか」



だって…!


跡部が好きって気付いて

跡部に初恋の人がいるってショック受けて

でもやっぱり跡部が好きって思って

ただ会いたいって


…それだけでいっぱいいっぱいだったんだもん




「告白したら何かが変わると思うけど?」


軽くテンパる私にため息をついた彩花の言葉に私はフリーズした



…そっか、告白したら今の関係が良くも悪くも変わってしまうんだ


相手はあの跡部だよ?



うまくいく可能性の方が0に近いに決まってる



───…なら、


「やっぱいい、今のままがいいもん」


他の子達より少しは跡部に近い位置にいれてるだけで、幸せだから


「沙織…アンタ、」

「告白はしたくなった時にするよ」


彩花は少し心配そうな顔をしたが、安心させるようにそう言うと渋々頷いた













うーん、告白か…



『私、跡部のことがすき』



「…むりむりむりむりむりむりぃー!」


言えない…!恥ずかしすぎて死ぬ…!


購買にお茶を買いに行こうと私は一人で廊下を歩きながら頭を掻きむしっていた



「うるせぇ奴がいると思ったらお前か、あーん?」


するといきなり後ろからよく知った声に呼び止められた


「っきゃあ!あっあああ跡部っ」


考えていたことが考えていたことだけに、私はあわあわと狼狽えてしまう


「どうかしたか?」


跡部は怪訝そうに私との距離をつめて顔を覗き込んでくる



わ…かっこいい……


改めて見たらやっぱりめっちゃカッコいいなコイツ…



…じゃなくてーっ!!



「ちちちち近いってば!」


しばらく会ってなかったし不意打ちの至近距離は心臓に悪い


ぐっと距離を開けるべく跡部の胸を押すと、跡部は面白くなさそうに舌打ちする


一定距離を置くと、私は久しぶりの跡部の顔をついついじっと見つめてしまう


「ん?何見てやがる」

「…跡部だなぁー…って思っ…て」


わっ、私なに言ってるんだろう…っ



ポロっと口から零れた言葉にカッと体が熱くなる


「あーん?当たり前だろうが、何バカなこと言ってやがる」


一人で真っ赤になっていると跡部は一瞬虚をつかれたような顔をしたが、ふっと笑みを漏らして私の頭に触れた



ちょ、ちょっと待って…!


久々で免疫力低下してドキドキしてるし今私絶対熱い…!



「だっ、ダメっ!」



半ばパニックに陥った私は、思わず────…どんっと跡部を突き飛ばしてしまった



…──しまった



そう思った時にはもう遅く、跡部は目を見開いて私の方を見つめていた



「あう…その…ごっ、ごめんなさい!」



私は謝るだけ謝ってその場から逃げ出した










最悪だ



あんなに会いたかったのに、跡部のこと突き飛ばすとか…



「ほんと…バカだなぁ、私」



購買の近くまで駆けてくると、私はゴツンと柱に頭をぶつけた













『だっ、ダメっ!』


取り残された跡部は、顔を真っ赤にして自分を突き飛ばした沙織が去っていった方を呆然と眺めていた



「なんだよ……せっかく久しぶりに会ったってのに」



お前は別に、俺様に会いたい…とか思ったりしてなかったのかよ



誰にも聞こえないような声で呟くと、跡部はその場をそっと後にした




It is me to have escaped.
(逃げたのはワタシ)

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雲と空耳と独り言+α




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