「えぇぇーっ!?告白されたぁー!?しかもあの山下くんにっ!?」

「どわぁあ声でかいってばぁ!」


翌日になって、色恋沙汰に滅法縁のない私はとりあえず友人の彩花に相談した


「でっでっ返事はしたの?」


目を爛々と輝かせて身を乗り出す彩花


「いや、ま、まだだけど…」


そんな余裕なんかなかったし…


「でも断る理由なんかないでしょう?」

「……うぅ、でも…」


モゴモゴと言葉を濁すと、彩花はははーんとニヤリと笑った


「あ、分かったぁ…アンタ、他に気になる人でもいるんでしょぉ」

「はぁっ!?なっなにそれ…」

「その様子だと…図星ね」


にまにまと嫌な笑みを浮かべる彩花


「まあ大体予想はついてるけど?」

「え?」


聞き返したら頭を叩かれた


「いったぁ!」

「もう、ほんと鈍感なんだから…アンタ告白された時、誰か他の人の顔思い浮かんだんじゃない?」


告白されたとき…?



頭に浮かんだのは─…




『あーん?』




彩花は黙り込んだ私の頭をよしよしと撫でる


「それが答えなんじゃないの?」











放課後──…


「え、と…昨日の返事聞かせてもらえるのか?」


私は山下くんを呼び出した


「うん…あのね」


早く断らないといけないのは分かってはいるものの…

なかなか言葉が出てこない


「…西園寺さん、もしかしてさ他に好きな人がいるの?」

「えっ!?すっ好きな人っ!?」


私がウジウジしていると、山下くんが口を開いた


顔を真っ赤にして口をパクパクする私の様子を少し悲しそうに見る山下くん


「…その様子だと、そうみたいだね…」

「…ごめんなさい、私…山下くんの気持ちには応えられません」

「そっか…うん、分かった」

「あっ、あの…」


ありがとう、とその場を去ろうとした山下くんをつい呼び止めてしまう


「…なに?」

「あのね、その…"好き"ってどういう気持ちなの…かな?」


振った相手にこんなことを聞くのは酷なのかな…?



でも、私はこの気持ちの意味を知らなければならない



「そうだなぁ…」


山下くんは少し困ったように笑ったものの答えてくれた


「その人のことを考えると、胸の辺りが締め付けられたり…」

「うん」

「一緒にいるだけで鼓動が速くなったり、体の中から熱くなったり…」

「…うん」

「でも、その人のことを考えてたら…すごく、幸せな気持ちになるんだ」

「……そ、っか」


慈しむような目で、私を見つめる山下くん




でも、私の心に浮かんだのは──…




「今西園寺さんの頭に浮かんだのは、違う男…だね?」

「………うん」

「…そっか…俺、応援するよ」

「…ありがとう」

「じゃあね」


そう言って山下くんは静かに私の前を去った




ありがとう


好きになってくれて




ありがとう


…好きな気持ちを教えてくれて





やっと気付いた


…ううん、気付いてはいた





やっと分かった


私は──…






「あーん?沙織じゃねぇか、こんなところで何してやがる」



どくん



「跡部…」


しばらくその場で立ち尽くしていると、部活終わりの跡部がやってきた


「ったく探しただろうが…帰るぞ」

「…うん」




『その人のことを考えると、胸の辺りが締め付けられたり…』


『一緒にいるだけで鼓動が速くなったり、体の中から熱くなったり…』


『でも、その人のことを考えてたら…すごく、幸せな気持ちになるんだ』




…全部当てはまるじゃん、ばか


私、いつの間にか──





跡部のことが好きになってたんだ


A person who comes to mind is...
(心に浮かぶのは...)




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