ガタッ


「ん…」


私は物音で目を覚ました


あれ、私寝ちゃってたんだ

どれぐらい寝てたんだろう…?


雨のせいで外は暗く、まだ夕方なのか夜なのか分からなかった



……ん?物音…?


私は嫌な予感がした



静かに体を起こし、電気を点けようと壁づたいにスイッチを探す


ギィー…


その時、リビングのドアが小さく軋んだ


「だ…誰かいるの?」


恐る恐る暗闇に声をかけたと同時にピカッと雷が轟いた


「きゃっ…!」


稲妻の光で部屋の中が一瞬照らされる


私の視線の先にいたのは、全身黒ずくめの男で、手には鈍い光を放つナイフが握られていた



う、そ…強盗…!?



私は跡部の家を出る時に見ていたニュースを思い出した


なんで家に…っ


男は私の姿を見て少し驚いた様子を見せたがすぐに私ににじりよってきた


「こ、来ないで…」


私は後退りをして距離を保とうとするが、すぐにソファにぶつかり、座り込んでしまった


「声を出したら…殺す」


そんな私を上から見下ろすようにして低い声で男は言った


私は咄嗟に口に手をやった


その様子に満足し、男は室内を物色しはじめた



片っ端から引き出しを開け、あらゆる棚を捜索する



私は男が夢中で金目のものを探している間に、机に投げ出されていた携帯を手繰り寄せようとした


しかし



ガタッ



しまったと思った時には携帯は床に落ちてしまっていて、その音に男が振り返った


「このアマ…」


そしてナイフを軽く振りながら私の方へと歩み寄ってくる


私は恐怖から声が出せなかった


男は私に覆い被さるように身を屈め、強引に私の顎を掴んだ


「ふん、近くで見たらなかなかいい女じゃねぇか」


ニヤリと嫌な笑みを浮かべた男に私は身の危険を感じた


「いやっ…離して」


声を絞り出して男の手から逃れようとするもあっという間にソファに組み敷かれてしまった


「いい思いさせてやるよ」


そう言って男は私のシャツに手を伸ばす




嫌だっ…!誰か助けてっ






───跡部っ






「てめえ何してやがる!」


その時、バタバタと部屋に誰かが飛び込んできて私の上に覆い被さっていた男が殴り飛ばされた





え…嘘──





パッと部屋の電気が灯され、眩しさに目を細める


「あ、とべ?」


そこには先ほど頭に浮かんだ人物の姿が


斉藤さんの姿もあり、男を取り押さえているところだった


「沙織、無事か」

「……うん」


跡部はほっとしたように息をつき、優しい手つきで体を起こしてくれた


「あ、れ…?」


先ほどまでの緊張の糸が切れたためか、跡部の姿を見て安心したのか─目から涙が溢れた



すると跡部にぐっと後頭部を引き寄せられ、私は彼の胸へと飛び込む形になってしまった


腰を引き寄せられ強く抱き締められる


「跡部…っう」


ぽろぽろと次から次へと涙が頬を伝う


「こ、怖かっ…ひっく」


一度溢れてしまうともう止めることは出来なくて、私は気がすむまで泣きじゃくった


くっついた体から跡部の早い鼓動が伝わり、あぁ…急いで来てくれたんだ…と思ったらまた涙が溢れた


跡部はそんな私を落ち着くまでずっと抱き締めていてくれた








「ぐすっ…」


私が落ち着いたのを見計らい、跡部は私に話しかけてきた


「何で黙って出ていったりした?」

「……それは…跡部に迷惑かけたくなかったから」


結局迷惑かけちゃったけど、と小さく呟くと後頭部をポンっと叩かれた


「隠し事をしたら承知しねぇって言っただろうが」

「…うん」

「これはなんだ?」


跡部が取り出したのは嫌がらせの文言が書かれた手紙


「なんでそれ…」


全部持ってきたと思ってたのに…


「落ちてたんだよばーか」

「そっか…」


…バレちゃったか


「それにな、こんな手紙なくともお前がメス猫どもに嫌がらせをされてることぐらい知ってた」

「え…!?」


私は驚いて顔をばっと上げた


「っ」


すると視界いっぱいに跡部の顔があり、カッと顔があつくなった

跡部の腕の中にいるから当たり前か


心なしか跡部も顔を赤らめていて、手で無理矢理顔を下に向けられた


「…俺様が気付かねえわけないだろうが。てめーが言わねえから黙ってただけだ」

「…ごめんなさい」

「しかもよりによって強盗がうろついてる時に帰りやがるし」

「う…」

「もっと俺様を頼りやがれ」



二度と心配かけんじゃねぇぞ

肩に顔を押し付けられ、呻くように耳元で言われた


「…うん」


小さく頷くとようやく跡部は私を解放した


「帰るぞ」

「あ……」


跡部はゆっくりと立ち上がり、私に手を差しのべる


「…いいの?」


私は確認するようにおずおずと跡部を見上げる


「あーん?帰ってこいって言ってんだろうが」


私はそっと跡部の手に自分の手を重ねた

そしてぐっと体を起こされる



「跡部…?…ありがと」

「…ふん」


The place that makes my mind relax
(安心できる場所)




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