跡部邸に身を寄せるようになって数日


私たちは結局初日のようにベッドの端と端で寝るという結論に落ち着いたのだが…

目が覚めると何故かいつも跡部の腕の中で寝ている

そしてノソノソと跡部の腕から這い出して洗面所で身仕度を整える

だいたい用意が終わって洗面所を出ると、跡部も起きていて準備もできている

そして朝食を食べてリムジンで学校まで送ってもらう

最初は一人で行くと駄々をこねたが斎藤さんに押しきられ、渋々一緒のリムジンに乗り込むことになった

帰りも教室で友達と話したり図書館で本を読んだりして跡部の部活が終わるのを待ち、リムジンで跡部邸へ帰る

そんな日々を送っていた



そして今日も放課後に友達である彩花と談笑なう


「ねえ、最近沙織さあー…」

「ん?なに?」


購買で買った紙パックのヨーグルトを飲んでいると、彩花がふいに訪ねてきた


「跡部さまと仲いいの?」

「ぶっ」

「ちょっと!汚いなぁ」

「ご、ごめん…」


想定外の質問に思わずヨーグルトを吹き出してしまった

慌ててハンカチで口元を拭う


い、いきなり何だ…びっくりしたぁ…


「べ、別にあんなやつと仲良くなんかないし」

「えー?でもこの前一緒にいるところ見たよー?」

「や、やめてよ!私アイツのこといけ好かないし…」

「えー?この前言ってたのって跡部さまのことだったんだ…で、何で?」


何でって…


「えっと…俺様だし上から目線だし家の権力乱用してるし生意気だし俺様だし」

「俺様2回目」

「あ…と、とにかく!気に食わないんだよ」

「ふぅん?」


納得できなさそうにジットリとした視線で私の顔を見てくる彩花


…そうだよ

何か最近忘れてたけど私はアイツが気に食わないんだ、そうだ、うん


意外といい奴かもとか可愛いところあるじゃんとか思ったりもしたけど…

って違う!思ってない!

何考えてんだ私は


うあーと頭を抱えて一人で葛藤する私


「はぁ…無理矢理そう思おうとしているだけなんじゃん?」


そんな私は彩花が呟いた言葉なんて耳に入っていなかった


「ん?何か言った?」

「べっつにー?何て言うか頑固だなぁって思って」

「なっ」


彩花の言葉に頬を膨らませるも


「そんな顔しても可愛くないぞー」


と頬っぺたをつままれた


「じゃあ、そろそろ私は帰るねー」

「あ、もうこんな時間か…」


ワイワイと話している間にいつの間にやら下校時間が迫っていたようだった

鞄を肩にかけて立ち上がった彩花の後を追い、私も教室を出る





「沙織さ、」


廊下を歩いている間に彩花から声をかけられた


「うん?」

「何かあったらちゃんと私に言いなさいよね」

「?うん」


今さら何を?と思いながらも私は頷いた





校門で彩花と別れて私はテニスコートに向かった


ちょうど部員たちが帰り始めた頃で、私は少し離れたところで跡部を待った


しばらく待っていると、跡部はいつものように最後に現れた


そして私に気付いてダルそうに近寄ってくるのもいつものこと


「行くぞ」

「はいはい」


それだけ言葉を交わすと私たちは斎藤さんの運転するリムジンが待つ場所へと向かう


少し離れて歩いている間、私はちろっと跡部の方を盗み見る


「あーん?なに見ていやがるてめぇは」

「見てないし」

「は?見てただろうが」

「自意識過剰なんじゃないですかぁー?」

「てめぇ…」



そうだ

私はコイツが気に食わない




だけど何でだろう?

最近こうして話すのが割りと楽し…

いや、ないないない

どうにかしてるんだよ最近の私は

アレだ、環境の変化とかで疲れてるんだ



「何一人でブツブツ言ってやがる」


一人でうんうん頷いていると、跡部にフン、と鼻で笑われた


So,he is a disagreeable person
(そう、コイツは気に食わない奴だ)




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