「う…ん」


朝になり、自然と目が覚めた私は薄く目を開ける


あれ…?ここどこ…


ぼんやりとした頭で考えると昨日の出来事が少しずつ思い出されてきた


そっか、ここ跡部景吾の部屋か…

…ん?そういえば私、ベッドの端っこで寝てたよね?


だんだんと脳が覚醒していき、今の状況を分析し始める


んん?私が寝てるのベッドの真ん中じゃね?

あー…跡部景吾にまたグチグチ言われるや…


と背を向けていた、奴のいるはずの方を振り向こうとする


が、そこで何かおかしいことに気付いた


体が、動かない…?

…ってゆーか重い?


体を動かそうとすると何故かそれはかなわない


「んー…」


モゾモゾとその場で頑張って方向を変えて顔をあげると


「どわっ!?」


跡部景吾の寝顔のドアップ


え、え、なになに

どういうこと!?


なんと私を抱き締めるように跡部景吾が寝ているではないか


そうか、重たかったのはコイツがのし掛かってきていたから…


って



「ちょ、ちょっと!跡部景吾、起きて」


とりあえず起こそうとして跡部景吾の胸をバンバン叩くも、なかなか起きない


「もう…っ、おーきーろー!」


仕方なく耳元で大きな声を出す


「うー…ん」

「っ!」


すると低く唸った跡部景吾はあろうことか私の肩に顔を押し付けてきた


「…ん、あと5分…寝かせろ…」


それだけ言うと奴は、再び規則正しい寝息をたて始めた


「私は抱き枕かよ…」


動くことが出来ずに諦めて体の力を抜く

私を腕に抱き、安心しきったように無防備な寝顔を見せる跡部景吾



…なんか、かわいいかも



ってバカか私は

跡部景吾だよ、あの跡部景吾

かわいいわけあるかっ


首をブンブン振っていると、跡部景吾がモゾモゾと動いた


「あ、起きた?」


薄く開かれた目と私の目が至近距離で交差する

するとだんだんと目を見開いていく跡部景吾


「………なにしてやがる」

「…それはこっちの台詞なんだけど」


奴はようやく状況を理解したらしく、さりげなく私に回していた腕を解いた

ようやく体が解放された私はムクリと体を起こして伸びをした

そして頭を軽く押さえながら同じく体を起こした跡部景吾


「…さっきのはどういうことだ」

「え、分かんないよ。アンタが勝手に寝てる間に抱き着いてきたんじゃないの?」

「………記憶にねえ」


さすがに少し気まずそうに跡部景吾は視線を反らした


「ねぇ…跡部景吾ってさ、意外と…」

「…あーん?」

「や、何でもない」


……甘えん坊だったりする?

とか

かわいいところもあるんだね


なんて言ったら絶対怒られる


「ちっ、それよりお前…その呼び方どうにかならねぇのか」


何も言わない私の様子に不機嫌そうに髪をかきあげながら跡部景吾はそう言った


「え?なにが?」


首を捻って私はキョトンとする


「だから…フルネームで呼ぶの止めろ。おかしいだろうそれ」

「あぁ…そっか」


今まで無意識だったけど確かに変だな

「じゃあ、跡部?」

「ふん、まあそれでいいだろ」


跡部景…じゃなくて跡部は少し微笑むとベッドから出た


「おら、何ぼさっとしてやがる、学校行くぞ」

「…アンタのせいで起きれなかったんじゃん」

「あーん?」

「別にー?」


やいやい言い合いながら互いに身仕度を整える


ってゆーか、私いつの間に跡部とこんなに普通に喋るようになったんだろ

跡部と一緒に暮らすなんて息苦しいんだろうと思ってたけど意外とやっていけそう?


「行くぞ」

「ん」


私はなんだかおかしな気持ちを抱きながら跡部に着いて部屋を出た


stimulative awakening
(刺激的な目覚め)




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