「うーん…」


2年に上がり初めてのテストを1週間後に控え、私は放課後の教室で教科書とにらめっこをしていた


ある程度の科目は平均以上は取れる



しかし、化学だけはどうしても苦手なのだ…



「もぉ無理やぁー!」


私以外誰もいない教室には、西日が射し込み部屋がオレンジ色に染まる


だが気分はそんな明るい色とは真逆で


私は机に突っ伏した



だから私は誰かが教室に入ってきたことに気付かなかった




「結衣?」

「!」


突然声をかけられ、私は飛び起きた


「部長!?」


その声の主は、私がマネージャーを務めるテニス部の部長、白石さんだった


「どうしたんですか!?」


なぜ3年の彼が階の違う2年の教室にいるのだろうか


「ん?ちょっと化学室に忘れ物取りに行ってたんや」


確かに化学室は2年のフロアにある


「そんで帰ろうとしたらこの教室だけ電気ついてたから覗いたら結衣がおったんや」

「そうだったんですか…」

「で?突っ伏してどないしたんや?」


そして何故か私の前の席に腰掛け


「…化学の教科書か」


パラパラと私の教科書をめくる白石先輩


「…苦手、なんです」


素直に薄情すると白石先輩は驚いたように目を見開いた


「へぇ、結衣でも苦手なものあるんやな」


何でも要領よくやってるからなぁ、と白石先輩は優しく微笑んだ


「いつもほんまに助かっとるで、おおきに」




どきっ




ふわりと頭を撫でられて私の胸は高鳴った





夕日に照らされ、キラキラと先輩の髪が輝く


輪郭もオレンジ色に染まっていて─…





あ…いま、二人っきりなんや─…





そのことを意識して急に恥ずかしくなった



「あのっ…」

「教えたろか?」

「……へ?」


突然の申し出に思わず聞き返してしまった


「俺、こう見えて化学得意やねんで?」


ニッコリと微笑んだ彼に思わず見惚れてしまい私は返事が出来なかった


すると、少し心配そうに白石先輩が私のおでこに手を添えた


「っ!」

「ん、熱はないな…ぼーっとしてどないしたんや?」

「いっ、いえ…あ、化学っ!教えてほしいですっ!」


至近距離の先輩に戸惑いながらも慌てて頭を下げてお願いした


「よっしゃ、任せとき」


どこか嬉しそうな白石先輩


「じゃあテストまで毎日ここで勉強会やな」

「へっ…毎日は迷惑じゃないですか?」


先輩の提案に申し訳なくておずおずと訊ねると


「だーいじょうぶや、俺を誰やと思ってるんや?…それにな、」

「?」



うわ、流石言うこと違うわー…と思っていると先輩が少し視線を窓の外に投げ掛け、言葉を紡いだ




「そしたら部活なくても毎日結衣に会えるやろ?」




少し小さく先輩が言った一言で、私の頭は真っ白になった




…横を向いた先輩の耳が赤いのは、夕日のせい?



それとも─…





「え、と…1週間よろしくお願いします」


これから始まる1週間に想いを馳せながら私は言った



1週間後に、私たちの関係は変わっているのだろうか─…


淡い期待を胸に抱いて、私は化学の教科書を胸に抱き締めた













────────
年上な白石(^O^)
白石先輩に勉強教えてほしい
でも絶対集中できねぇ

2012*04*02***



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