謙也とお祭り
そうだ、お祭りに行こう!
〜謙也の場合〜
『謙也っ!お待たせ!』
今日は地元のお祭り
私たちは神社の鳥居の前で待ち合わせをしていた
私は気合いをいれて浴衣を引っ張り出して身に纏っていた
謙也も甚平を着ていて、その姿に私の胸はとくとくと速さを増した
「あー…おう」
謙也は私の姿を見るなり視線をそらせて曖昧に返事をした
『謙也?』
私が甚平の裾を引くと、謙也はぴくっと小さく肩を揺らして
「あー…その、行こか?」
とスタスタと歩き始めた
…─何で浴衣のこと何も言うてくれへんの?
謙也に喜んでもらおうと一生懸命お洒落してきたのに…
私は少し寂しい気持ちになりながらも謙也の後を追った
『まっ、待って…!はぐれちゃうから手繋がへん?』
謙也は後ろを振り向かずに人混みをスイスイすり抜けてどんどんと進んでいってしまい、下駄を履いている私は着いていくのに必死だった
だから手を繋ごうと訴えたものの…
「だ、大丈夫や」
こちらを見ようともせずに拒絶されてしまった
『謙也…っ』
そうこうしている間にも人の壁に阻まれて謙也との距離が開いていってしまう
私の声は、虚しくも賑やかな祭り囃子にかきかされてしまった
『あっ!』
さらには下駄を履いた足が絡まり、私はその場に転んでしまう
ううー…謙也ともはぐれるし、浴衣なんか着てこやんかったらよかった…
「おい!邪魔や!…ってお嬢ちゃんよぉ見たらかわええやん」
1人で泣きそうになっていたその時、ちょうど後ろにいた少し派手目の男の人に顔を覗き込まれた
「なんや?1人か?そんならお兄さんといいことしようや」
ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべたその男が私の腕を掴んで無理矢理立ち上がらせた
『やっ、やめてください!一緒に来てる人いてます!』
私は必死で抗議をするが
「んー?そんな奴おらへんやん、嘘はあかんなぁ」
とかわされてしまう
確かに、私の側に謙也の姿はない
その事実を思い知らされて益々悲しい気持ちになってしまう
「な?せやから俺と…」
男が黙りこんだ私を人混みから引っ張り出そうとしたその時
「──っ!」
謙也が私の名前を呼ぶ声がして、肩を強く引かれた
「はぁっ、はぁっ…すんません、こいつは俺の連れなんです」
バッと後ろを振り向くと、そこには息を切らせた謙也がいて…
「ほら、行くで」
そう言って私の手を取って男の前から私を連れ出した
『謙也…』
私が呼び掛けるも謙也は黙ったままズンズンと進んでいき、人気のないところで足を止めた
そしてこちらを振り向き、私を強く抱き寄せた
『けん…や?』
突然のことに私が戸惑っていると、謙也は絞り出すように掠れた声で
「すまん…怖かったやろ?ほんまにすまん…」
そう囁いた
『謙也…っ!こわっ、こわかったよぉ…』
謙也の温もりを全身で感じ、私の目からは堪えていた涙がぽろぽろと流れ落ちた
『うっ、なんで…何で先々行くん?ゆ、浴衣だって謙也が喜んでくれるかなって…ひっく、着てきたのに…何も言うてくれへんし……うぅー』
涙と共に我慢していたことがどんどん溢れていく
そんな私を謙也はさらに強く抱き締めた
「すまん、浴衣…めっちゃ似合うとる、可愛すぎるっちゅー話や……可愛すぎて、直視できんかったんや」
『…へ?』
「手かて緊張して手汗すごくて繋げるわけあらへんし……めっちゃドキドキしてもうて…お前を置いていってることにも気付かへんかった」
最低やな、俺…
そう自嘲気味に呟く謙也の背中に私も手をのばした
『ううん…謙也、ちゃんと来てくれたもん』
さっきの謙也はきっと一生懸命私を探して走ってきてくれたんだろう、息を切らして汗だくで…
ちゃんと、私のこと想ってくれてるんやって思えたよ
「…もう、離さへん」
そう言った謙也はそっと涙で濡れた私の頬を優しく撫でてくれた
『…うん、離さんとって?』
そう言って微笑むと、謙也は少し目をさ迷わせてから
私の唇に触れるだけのキスをした
その後、謙也は私の手をしっかり握ってくれて…二人で改めてお祭りの賑やかさに紛れていった
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謙也さんとお祭り\(^o^)/
走り書きで申し訳ない…
しかも甘さ控えめorz
彼女が浴衣着てきても照れちゃって何も言えなくなってどんどん先に行っちゃうんだと思います彼は
それで後から彼女とはぐれたのに気付いて必死で人混み逆流して探しに来てくれるんだと思います
全く、不器用な男だわ←なに
でも私はそんな謙也さんが好きです(((え
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