06


「購買っていつもこんなに混んでるんですか?私、いつもお弁当なのでなかなか購買来ないんですよね」



私はひょんなことから一緒にやきそばパンを食べることになった忍足さんに問いかけた


「せやなぁ、大体こんなもんやな」


やきそばパンを豪快に頬張りながら忍足さんが答える


「はむ……おいしー!」


私もやきそばパンを頬張ると程よいソースの香りが口内いっぱいに広がった


「せやろ?ここのやきそばパンは格別やっちゅー話や!」


得意気に笑顔で言う忍足さん


「ふふっ、そうですね」



この人の笑顔を見ているとこっちまで笑顔になってまうなぁ


私もつられて微笑むと、忍足さんはじっと私の顔を見つめてきた



「えっと…どうかしましたか?あっ、もしかしてソースついてましたっ!?」


慌ててハンカチを取りだし口を拭く


「あーちゃうちゃう」

「?」


私が首をかしげると、少し困ったような顔をして遠慮がちに忍足さんが口を開いた


「自分よお笑うやん」


「え?」


「せやのに初めて会った時は泣いてた。あの時は詮索しやんって言うたけど、やっぱり気になってな」

「あ…」

「言いたくなかったら言わんでええけど、何か悩んでるんやったら話ぐらい聞くで?」



忍足さん…


今まで誰にも言っていなかった、言えなかった恋心─


忍足さんになら、相談できるかも…?



「実は─」

「謙也さん?」


私が口を開きかけたその時、頭上から聞き間違えるはずのない声がした


「…と山本?」

「財前くん…」


そう、声の主は今正に話そうとしていた人物…財前くんだった


「おー!なんや財前やないか」


私が驚いて絶句していると、忍足さんが財前くんに話しかけた



あれ…?この状況…

わ…どうしよう…

二人でお昼食べてるところ見られた…

誤解されたら…




「それよりどうしたんですか?」

「なにがや?」

「山本と知り合いなんすか?」


どくん


「山本…?ああ、ちょっとな」

「ふーん」

「あの…財前く…」


キーンコーンカーンコーン


「あ、予鈴や。じゃあ俺行きますわ」

「おう、また部活でな」


私が弁解しようとした言葉は、チャイムによってかき消されてしまった


結局何も言えないまま財前くんの背中を見送る



「じゃあ俺らもそろそろ行こか?」

「…」



財前くん…変な誤解してへんとええけど…



「…どうしたんや?」

「…あっ、な、何でもないです!行きましょうか!」



ボーッと財前くんの方を見つめていて、忍足さんの言葉が耳に入ってこなかった


あはは、と笑って誤魔化すと、忍足さんは財前くんが去っていった方と私を数回見比べて立ち上がった



「…ほな、行こか」


忍足さんに促され、私達はそれぞれの教室へ向かった





「ほな、俺この階やから」

「はい、お昼はありがとうございました。じゃあ…」


3年生の階に行き着き、忍足さんにもう一度お礼を言って見送る


「…あ、そういえば名前聞いてなかったな…教えてくれへんか?」


数歩進んだ後、そうそうと言った風に忍足さんが振り向いた


「あ、そういえばそうでしたね…山本梓です」

「そうか、じゃあまたな…山本。あと、俺のことは"謙也"でええで?みんなそう呼ぶしな」

「…謙也、さん?」


そう言うと忍足さ…謙也さんはニカッと笑って自分の教室へ入っていった


キーンコーンカーンコーン


「やばっ!本鈴!?」



謙也さんを見送った後、私も慌てて自分の教室へと駆け込んだ




名前で呼ぶことよりも、遅刻ギリギリなことよりも、



誤解されていないかが
ただただ心配で



私は教室に入ってから財前くんの背中をじっと見つめた



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