05



「ひゃー…すごいな」



お昼休み



今日は購買でパンを買うつもりだった私はその戦場を前に立ち尽くしていた


普段はお弁当なので、お昼時の購買がこんなに人でごった返しているなんて知らなかった


「やきそばパン無理かなぁ…」


人の壁を前に何も出来ないでいると



「なんや、また自分かいな」


後ろから声をかけられた


「お、忍足さん!」


振り返るとそこには、やきそばパンを手に持った忍足さんがいた


「今度はどうしたんや?」

「…やきそばパンが欲しいんですけど…人の多さに圧倒されちゃって」

「あーやきそばパンは人気やからなぁ…もう無くなっとるかもしれへんな…」

「そうですか…」


私がしょぼんと肩を落とすと


「よっしゃ、ちょっと待っとき」


忍足さんは私に目配せすると、人の波の中に飛び込んでいった


「おっ、忍足さん!?」


みるみるうちに見えなくなってしまった…


するとすぐに人混みから忍足さんが飛び出してきた


「わっ!早いですね!」

「浪速のスピードスターをなめたらあかんっちゅー話や」



浪速のスピードスター…?



何やろ?と首を傾げた私の目に飛び込んできたのは忍足さんが手に持っていたもので


「えっ、取ってきてくれたんですか!?」



彼の手にはしっかりと2つ、やきそばパンが握られていた



「おう、最後の1個やったわ…危なかったな」


ほら、とやきそばパンを差し出され、慌てて私はそれを受け取る


「早よ会計すませてき」


購買のおばちゃんがいる方を指差して忍足さんが言った


「はい、すぐ済ませてきます!」



私は小走りで会計を済ませて彼の元へと戻ってきた



「あの、また助けてもらっちゃって…ありがとうございます」


私が頭を下げると、彼は屈託のない笑顔で


「気にしやんでええで」


と答えてくれた




「そうや、せっかくやし一緒に食わへんか?」

「え?」


突然の誘いにキョトンと首をかしげると


「やきそばパン、一緒に食わへんか?」


やきそばパンを私の目の前でぷらぷら振りながらもう一度言った


「あ、はい!」

「ほな、そこ席空いてるから座ろか」


私が頷くと近くの席を指差し、私が座るようにと椅子を引いてくれた


「ありがとうございます…」




そうして私は忍足さんとお昼を共にすることになった



なんて彼は
優しい人なんだろう



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