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最近なんや謙也がおかしい


え?もともとやないかって?


まあせやけど、いつもと何か様子が違うんや



ぼーっと遠くを眺めたり、本人は無意識なんやろうけど溜め息をよおつくようになった





何となく原因は分かってるんやけどな





「…あ」


その時、窓の外を眺めていた謙也が小さく声をあげた


「なんや?」


謙也の隣に立ち、窓の外に目をやる



…はーん、そういうことかい



「山本さんやん」

「…せやな」



うーん、もう確信的やな



「なぁ白石…?」


すると思いがけず謙也が声をかけてきた


「ん?」

「俺、なんか最近おかしいねん」



お前はいつもおかしいで?




とは言わずに、いたって真剣な様子の謙也に向き直る


「どうかしたんか?」

「何かな…このへんが苦しいんや」


そう言って謙也が押さえたのは自分の胸


「それは、いつもなん?」

「いつもって言うか…あー…」


俺が訊ねると言いにくそうに視線をそらした




「…誰か特定の人物のこと考えたり、会って話したりした時か?」



そう言うと謙也は目を見開き、みるみるうちに顔を赤くした


「なっ…べ、別にそんな……いや、そうやな…」


小さく息をついて謙也は窓の縁に肘をついた


「なんや、素直やないか」


俺は窓辺につかれた謙也の肘を軽くつついた


「ほんまはもうお前の中で答え出てるんとちゃうか?」


俺がそう言うと、謙也はしばらくの間口を閉ざした




自分の中で自問自答を繰り返しているのか


自分の気持ちを整理しているのか





俺は謙也が口を開くのを静かに待った


「…ほんまはな、」

「うん?」


そして謙也はゆっくりと話し始めた


「ほんまは…どっかで気付いてたんかもしれへん。せやけど、違うって言い聞かせてきたんや…」

「おん」


俺は時折相づちを打ちながら続きを促す


「認めてもうたら、言葉にしてもうたらもう後戻り出来ん…そう思ったんや」

「せやな…」

「あいつにはめちゃめちゃ好きな奴がおって、俺なんか見てへん…せやから自分の気持ちに蓋してた」

「…」

「でもやっぱり無理やったんや─…自分の気持ちには嘘なんかつかれへんっちゅー話や」

「…そうか」



そして俺は謙也の決定的な言葉を待った





「俺は…俺は、山本が好きなんや」





窓から見える山本さんを優しい目で見つめながら、謙也ははっきりとそう言った


「…謙也、よう言うたわ」


俺が謙也の頭をぐしゃぐしゃと撫でると


「は!?何やねんやめろやっ」


謙也はどこか照れ臭そうに俺の手を払った


「…謙也?」

「…なんや?」

「頑張れや」

「…おう」





財前が好きなのは麻由


そんな財前を想っている山本さん



…そして山本さんが好きな謙也





この先どうなるか分からへん



せやけど

彼女を幸せにできるのは
お前や



俺はそう思とる



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