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ちぅー…


ドリンクバーで淹れてきたオレンジジュースを口に含む



ひょんなことから私は謙也さんとファミレスに来ている

放課後ということもあって、店は学生が目立っていた



「で、早速本題やねんけど」


キョロキョロ辺りを見回していると、向かい側に座っていた謙也さんが口を開いた


「あ、はい…」



そうや、相談に乗ってくれるって言ってくれてたんや



「あー…その前に1個だけ聞きたいことあるんやけど、ええか?」

「はい、何ですか?」


少し歯切れの悪い謙也さんの様子に私は首をかしげる


「間違えとったらすまん……山本、お前は…財前が好きなんか?」

「えっ!」



思わぬ核心をついた質問にカッと顔に熱が集まる



「…その様子やと図星みたいやな」



やっぱりな、とどこか淋しそうに謙也さんが言った



「な…なんで…」

「そんなん見てたら嫌でも分かるわ。自分、いつも財前のこと見とるやろ?」

「ぅ…そ、そんなに見てましたか?」



うわ、恥ずかしいよ…



「せやな…財前が麻由とおるときは特に、な」





ぴくっ


麻由先輩の名前が出た途端、私の肩がわずかに震えた




「もしかしやんくても…山本が悩んどるんは、財前のことやないか?」


優しく訊ねられ、私は小さく首を縦に振った


「謙也さんが言う通り、私…財前くんが好きです」



私は素直に彼を好きになった経緯を謙也さんに話した




「…そうか、辛かったな」


仲のよい友達にも言えなかった恋心をようやく誰かに打ち明けることが出来て、少し気持ちが軽くなった気がした


「財前くんが先輩が好きなことは分かってますし、そんな財前くんを好きになったんは私やから…でもやっぱり二人でいるところを見るのがすごく悲しくて…私はただの友達やって面と向かって言われちゃったのに」

「そうか…」



私が自嘲ぎみに笑うと、謙也さんは優しく私の頭を撫でた


彼の温もりに心が解されていくような感じがすると同時に、何故か涙が溢れそうになって私は慌てて笑顔を作った



「私、謙也さんにこうしてもらうとスゴく落ち着きます」

「っ…そ、そうか?ほな、いっぱい撫でたるわ」


一瞬驚いたような顔をしたが、謙也さんはニカッと微笑んで私の頭をわしゃわしゃと掻き回した


「きゃー!やめてくださいー」


あはは、と二人で顔を見合わせて笑い合う



「…無理して何でも一人で溜め込まんと、ちっちゃいことでもええから俺に相談してや?」



ふと真剣な声でそう言われ、私はまた泣きそうになってしまう



「…ありがとうございます」



俯いてお礼を言うと、また謙也さんは私の頭を軽く撫でてから立ち上がった


「ほな、そろそろ帰ろか」

「あ、はい」






ファミレスを出ると、もう日は沈みかけていた

謙也さんは自転車を押しながら、二人で並んで遊歩道を歩く


「家どっちや?送ってくわ」

「えっ!そんな…近いですし大丈夫ですよっ」

「近いんやったらええやないか、遠慮しやんでええっちゅー話や」

「じゃ、じゃあ…お言葉に甘えて…」

「おっしゃ!任しとき!」





そうして半ば強引に押しきられる形で家まで送ってもらった








「ほんとに今日はありがとうございました」


家の前で謙也さんにペコッと頭を下げる


「俺も気になってたし話聞けてよかったわ」

「それじゃあ…」

「あー、ちょお待ち」



私は家の中に入ろうとしたが、謙也さんに制止された



「?」


何ですか?と訊ねようとしたが、また頭に手が伸びてきて、ぽんぽんと一定のリズムで撫でられた


私は大人しくされるがままになっていたが、柔らかく頭を撫でられて先程堪えた涙が溢れてきた



慌てて拭おうとしたが、グイッと引き寄せられて、あっと思った時には謙也さんの腕の中にいた



「け、謙也さ…」

「無理すんなって言うたやろ…」

「っ!」

「俺の前で、無理に笑おうとすんな」

「…」

「泣きたい時は泣けばええ…お前には心から笑って欲しいんや」

「…うっ」




私は今まで堪えていた分も、謙也さんの腕の中で泣きじゃくった




「財前く…っ、わたしを見て欲しいよ…うっ」



謙也さんは何も言わずに、ただ私を優しく…強く抱き締めてくれていた


彼の優しさに甘えても
いいのでしょうか



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