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キス…

財前くんと麻由先輩が




財前くんの家にプリントを届けに行ってから数日

2日休んだ財前くんももう元気に登校している


彼はその時のことを一切口にしない



…聞かなかったことにしてって言ってたから、当たり前か





「はぁ…」


1人で悶々と考え込みしながら廊下を歩いていたので、角を曲がってきた人影を避けることが出来ずにぶつかってしまった


「きゃっ!」


後ろに倒れそうになり、来るであろう衝撃を覚悟して目を瞑った




が、予期した痛みは走らず、背中には温かい感触が


その感触が大きな手だと気付くのに少し時間がかかった



「悪い!大丈夫か…って山本!?」

「え、謙也さん!?」


目を開き、見上げると至近距離に謙也さんの顔が


「「あ…」」


しばらく呆然と見つめ合ったあと、どちらからともなくバッと体を離した


「ごっごめんなさい!考え事してて…」

「いや、こっちこそ…すまんかったな」



そっか、謙也さんが抱き留めてくれたんや



「ふふっ…」


思わず小さく笑みを漏らすと、謙也さんが首をかしげた


「な、なんや?」

「あ…すいません……謙也さんにはいつも助けられっぱなしやなって思って」

「あぁ、山本危なっかしいからなぁ」

「えーそうですか?」


二人で笑い合いながら他愛のない話をする



…謙也さんと話していると何か自然と笑える気がするなぁ




「ほんで何考え込んでたんや?」

「あ…」


ふと真面目な顔をして謙也さんが切り出した



謙也さん…








「………謙也さんは、キス…したことありますか」


「……は?」






謙也さんはポカンと口を開いた後、カッと顔を赤くした



ん?

……え、ちょ…
私何てこと聞いて…っ!?




思わず口走ってしまったことを激しく後悔しながら私も彼につられて赤面してしまった



「あっあの!ごめんなさいっ気にしないで下さいっ!それじゃあっ」


恥ずかしくてその場から逃げ出そうとしたが


「ちょ…待てっ」


謙也さんに肩をつかまれてそれはかなわなかった


「…話、聞くで?」

「え…」

「…今日部活休みやし、山本さえよかったら放課後会わへんか?」



真剣な目に見据えられ、
気付けば私は頷いていた


彼といたら
不思議と心が落ち着いて



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