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「財前ー…は欠席かー?」



朝のHR、その場に財前くんの姿はなかった


財前くんがお休みなんて…珍しいな…



そっか、今日…

財前くんに会われへんのか




─…寂しいな




私は財前くんに会えないと知り、小さく肩を落とした









そしてあっという間に放課後


財前くんのいない1日は、驚くほどにつまらなかった







「山本、ちょっとええか」


帰り支度をしていると、担任の先生に声をかけられた


「はい?」

「財前に今日配布したプリント届けてほしいんやけど、頼めるか?」

「…へ?何で私なんですか?」


予想外の申し出に私は驚きを隠せない


「お前、財前と仲良えやろ?それに部活も入ってへんし…な?頼むわ」





財前くんと…仲良し…?



そう、見えるんやったら


嬉しいな



「…はい!分かりました!」


そうして私は先生からプリントと財前くんの住所を受け取った









「ん?山本やんか、今帰りか?」

「謙也さん!」


学校を出る前に偶然謙也さんに出会った


「はい、ちょっと寄るところがあるので…」

「そうなんか…あ、そういえば今日財前休みって聞いてんけど」

「あ…はい」


財前くんの名前が出て、私はピクンと思わず反応してしまう


「そうかー何や珍しいなぁ」

「そう…ですよね」



再び寂しさが胸に広がり、早く財前くんに会いたいという思いにかられる



「あの、じゃあ私はこれで…」

「おぉ、すまんかったな引き止めてしもて」

「いえ…実は財前くんにプリント届けに行かなきゃいけないんです。それじゃあ…」



軽く謙也さんに頭を下げてその場を去ろうとしたその時─



「…っ!山本っ」

「ひゃっ!?」



ぐっと謙也さんに腕を引かれた



「謙也、さん…?」


私は驚いて謙也さんの方を振り返る


「え…?」



謙也さんの目は、どこか切な気に揺れていた



「謙也さん…?」



もう一度謙也さんの名前を呼ぶと、謙也さんはハッと我に返ったように慌てて手を離した



「わ、悪い…!」

「いえ…」


そして謙也さんは何事もなかったかのようにニカッと微笑んで、


「ほら、急いでるんやろ?」


私の背を押した


「あ、はい…それじゃあ…」



謙也さん…どうしたんやろう?


私はその時の謙也さんの笑顔に違和感を覚えていた



どこか、無理をして笑っているような─…




「ほなな…財前によろしゅう」



私は胸に小さなわだかまりを残したまま、謙也さんに別れを告げた




さっきの謙也さんの様子が気になっていたが、



はやく、彼に会いたい


その気持ちが勝り、私は財前くんの家への道を急いだ





謙也さんが私の後ろ姿をじっと見つめているのにも気付かずに─…





「…どうしたんや、俺は─…」


謙也は梓の腕をつかんだ手を握りしめた



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