09
「よっしゃー!テニスやテニス!」
「はいはい、謙也は元気やなぁ」
放課後になり、俺と白石は一緒にテニスコートに向かっていた
「ん?あれ…財前やないか?」
すると、白石がふと足を止めて前方を見つめた
「なんや?財前がどないかしたんか?」
「あぁ…こないだ謙也に会いに来てた子と一緒に歩いとるわ」
「!」
慌てて白石の肩越しにそちらを見ると、そこには確かに財前と山本の姿が
「…何話してるんや?」
山本が懸命に財前に何かを訴えているように見えた
俺は何故か二人から目を話すことが出来なかった
そのまま二人はテニス部の部室の近くまで行くと、山本は財前を見送り、財前は部室へと消えていった
山本はしばらくその場で部室の方を見つめていた
…その時の表情は、昼間財前を見つめていたものと同じものだった
「山本…」
お前…やっぱり財前のこと──
ずきっ
…またや、何やねんこの胸の痛みは
「ふーん…そういうことか」
すると白石が何か納得したように顎に手を添えて頷いた
「なんや!?そういうことってどういうことやねん?」
俺は思わず白石の肩を強く掴んで問いただした
「…謙也、痛いわ」
「あ…すまん」
慌てて手を離すと白石は苦笑いをした
「謙也…お前もか」
「な、何がや?」
俺はわけがわからず首をかしげた
「なあ、謙也?財前って…」
「ん?」
「麻由のこと好きやんな」
「あぁ…せやんな」
当の本人は気付いてへんけど、端から見てて一目瞭然やからな
「…なかなか難しいなぁ」
白石は山本の方を見ながら再びわけの分からないことを呟いた
「白石…お前さっきから何を…」
俺が話についていけずにそう言うと、白石は俺に視線を戻して小さくため息をついた
「なんや謙也、無自覚かいな…まあ、こういうんは自分で気付かなあかんからなぁ」
ふ、と小さく笑みを漏らしたかと思ったら
「ま、頑張りや」
白石はぽんっと俺の肩に手を置いき、一言そう言って歩き始めた
「は?…意味わからんわ」
もう一度山本の方を見ると、もうそこに彼女の姿はなかった
自分の気持ちが
分からなくて、もどかしい