「蔵ノ介〜今日は天気いいし屋上で食べへん?」
「おう、ええで」
二人で屋上に足を踏み入れると心地よい風が頬を撫でる
「あー気持ちいいー」
「せやなぁ」
陽向に腰を下ろし、弁当を広げる
「なんや茜、今日はパンかいな」
いつもは手作りの弁当を持参している茜が今日取り出したのは食パン
「なんや食パンなんて珍しいな」
「うん!昨日親戚のおばちゃんにごっつ美味しいはちみつ貰ってん!」
ほら!と茜は得意気に可愛らしい手のひらサイズの小鉢(とある黄色のくまさんが持ってるようなやつや)を取り出した
「へー、なかなか本格的やん」
「やろぉ?ほんまに美味しいねん!」
ウキウキと嬉しそうに食パンにはちみつを塗り、それを口に含んだ
「ほいひ〜!」
頬を弛ませながら本当に美味しそうにはちみつを塗った食パンを頬張る茜
…ん?
「ふっ」
…口の端に、はちみつ付いとるやん
「え?なに?」
お昼時の柔らかな陽射しが茜を照らし、はちみつに濡れた唇がつやつやと光る
当の本人はキョトンと首をかしげている
「…ついとる」
指でぐいっと口を拭ってやると、みるみるうちに茜の顔が赤く染まった
「く…蔵ノ介…」
恥ずかしがる茜を見つめながら、指についたはちみつをパクッと口に含む
するとほどよい甘みが口内に広がった
「ちょっ…!」
「ん、確かにうまいな」
俺が微笑みかけると、茜は抗議の言葉を飲み込み再び食パンを頬張った
07.はちみつ
「…また付いとるんやけど…わざとなんか?」
「えっ、ちがっ……んっ!」
また唇を指で拭い、今度はそのまま茜の口に指を突っ込んだ
「…どや?甘い?」
そう尋ねると
「……うん」
茜は赤く染まった頬を隠すように下を向いて小さく頷いた
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