それは甘い20題 | ナノ








パァーン…

放課後、テニスコート


所属している吹奏楽部が休みの私は少し離れたところから練習の様子を眺めていた


視線の先にはもちろん白石の姿


「頑張ってんなぁー…」


部員たちに的確に指示を出す白石の姿についつい見惚れてしまう

あんなカッコいい人が私の彼氏やなんてなぁ…
人生何が起こるか分からんなぁ





「ありがとうございましたー!」


しばらくして練習が終わり、白石が私の元へと駆けてくる


「お疲れー」

「おう、すぐ着替えてくるからもうちょい待っててや」


私の頭に軽く触れ、白石は爽やかスマイルで部室へと走っていった








「白石かっこよかったよー」

「ほんまか?おおきに」


二人で並んで歩く帰り道

自然と繋がれた手から白石の温かさが伝わり、つい頬が弛んでしまう


「なにニヤニヤしてるんや?」

「へっ!?ニヤニヤなんか…してるかも」


白石に意地の悪い顔で尋ねられ、私は珍しく正直に頷いてみた


すると白石は驚いたような顔をし、照れたように微笑んだ


「あほ…かわいすぎやわ」


そのまま白石の足が止まる


「白石…?」


どうしたん?と私が白石の方へ顔を上げると、予想したより近い位置に白石の顔があり、思わず固まってしまう


「茜…」


熱を持った白石の瞳に見つめられ、私は捕らえられたように白石から目が離せなくなる


10センチ…5センチ…と白石との距離が縮まり…


白石の吐息を感じ、目を閉じたその時──



「あ!白石やんかー!白石ぃー!」

「「っ!」」



…金ちゃんの声がした

私たちは慌てて体を離し、声がした方を向くと、金ちゃんと謙也が学校方面から歩いてきていた


「なんや?二人とも顔赤いで?」


途中から駆け出して私たちの元にやってきた金ちゃんはキョトンと首をかしげて言った


思わず顔を見合わせると、白石の顔は真っ赤に染まっていて、そしてきっと、私の顔もこれでもかというぐらい真っ赤になっていて…



金ちゃんから少し遅れて私たちの元に来た謙也が


「あー…悪い、邪魔したみたいやな」


と苦笑いをして金ちゃんの頭をクリクリする


「痛いーっ!痛いわ謙也ぁー!」



涙目で謙也に訴えかける金ちゃんを尻目に、謙也の一言で私の顔の温度はさらに上昇してしまった







02.3センチ

今までで一番近くで見た白石の顔

またしばらく直視出来んくなるわ…



火照った顔を冷まそうとパタパタ手で顔をあおいでいると


「ほんまタイミング悪いわ…」


白石がクシャッと髪を掻きあげ、ぼそりと何か呟いた


「ん?なんて?」

「…なんもない」








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