それは甘い20題 | ナノ








「はぁ…茜…?」



呼吸が整ったのち、俺は茜の額に張り付く前髪をすくいながら声をかけた



「ん…なに?」



茜はまだわずかに虚ろな目で俺の方を向いた



「その…体、大丈夫か?」



優しくしたかったが歯止めが聞かずに激しく求めてしまったため、俺はおずおずと調子を訊ねた


すると、茜はふにゃっと微笑んで



「ん、大丈夫…ありがと」



と俺の体に擦り寄ってきた


俺はその体を優しく抱き締める



「蔵…私ね、嬉しかった…」

「ん?」

「蔵と…やっと繋がれて─…」



茜は恥ずかしそうに俺の胸に顔を埋めながらそう言った



「茜…俺もや、幸せで幸せでどうにかなりそうやったわ」

「えへへ…」



抱き締める力を強くして自らの気持ちを伝える



「初めての人が蔵でよかった」

「俺も茜の初めてになれてめっちゃ嬉しいわ」



そっと額に口付けると茜は少し不安そうに俺の顔を見上げてきた



「え、と…蔵も……初めて?」

「…せやで」

「そっか…」



俺が肯定すると茜は嬉しそうな顔をした



「じゃあ、さっきの蔵は私だけのものやね」



俺の頬をそっと撫でて言う茜が愛しくて仕方がない



「茜…」



俺はそのまま引き寄せられるように茜に唇を重ねた



「茜、俺な?」



きゅうっと抱き寄せて肩口に顔を埋めながら囁くと



「んっ、なに?」



こそばそうに身を捩りながら茜が続きを促した



「俺…茜の最初で最後の人になりたいんや」



そう言うと、茜の体がピクッと跳ねた



「え………それ、意味分かって……?」



そっと体を話して目を見つめると、茜の瞳は僅かに揺れていた



「もちろんやで?茜は…イヤか?」

「イヤなわけない…!私もそうなれたらって…その…思ってたから…」



段々小さくなり消え入りそうになる茜の声


俺は静かに茜の左手を引いて手の甲にキスをした



「あっ…」



そしてそのまま左手の薬指に強く吸い付くと、指の付け根に赤い印が刻まれた



「こんな見えるとこに…」



少し不平を洩らす茜に俺は優しく囁いた



「まだ指輪は買われへんけど…いつか絶対ここに付けるから………今のうちに予約」



そして左手の小指に自分の小指を絡めると、茜は驚いたように顔を上げた



「蔵…っ」

「約束、な?」



少し照れ臭かったが小指を軽く振りながらそう言うと、茜は無言でブンブンと何度も頭を縦に振った


そんな茜の目にはうっすら涙が浮かんでおり俺は唇でその雫をすくう



「茜…」



そのまま茜の体をベッドに押し付け再度唇を重ねる



「あ…く、ら…?」



潤んだ瞳で見上げる茜の頬を優しくなぞる



「今度は…優しくするから…」

「う、ん……ぁっ」



仄かに上気した顔で茜が頷くやいなや、俺たちはもう一度シーツの海に沈んだ──




14.指切り



─…一生、離したれへん








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