それは甘い20題 | ナノ








「白石くんいるー?」

「ん?ああ、わざわざすまんなぁ」



昼休み、一緒にお弁当を食べていたら他のクラスの女の子が蔵ノ介を訪ねてきた


蔵ノ介は彼女を認識すると、にこやかにそちらへと向かった




……誰やろ

なんか親しげに話してるし…




もやもや




私が悶々とお箸をくわえてじっとりと二人の様子を眺めていると、蔵ノ介の隣の席である謙也が話しかけてきた


「あれ、保健委員の子やで。委員会の連絡でもしに来たんちゃう?」

「え?…あ、そうなんや…」


そっか、委員会か

私がほっと息をつくと


「…ふっ」


謙也が小さく笑った


「なによー?」

「いや?茜、ヤキモチ妬いてたやろ?」

「うぐ…」


図星を指されて何も言い返せない




それにしても…


再び蔵ノ介の方を見やると、何やら楽しそうに笑っている



むぅー…




もやもや




「心配せんでも白石はお前一筋やっちゅー話や」


頬を膨らませていると、子供をあやすように私の頭をよしよしと撫でてきた


「…うん」


それでも蔵ノ介の笑顔を一人占めしたいもん

…なんて思うのはダメなんかな?






いつからこんなに独占欲が強くなってしまったんだろう







放課後部活終わり、私は蔵ノ介と帰路についていた


二人きりの時間


やけど、なぜか蔵ノ介はあまり喋らない



「ねぇ蔵ノ介…?なんか怒ってる?」

「…なんもあらへん」

「嘘やん、だって全然喋らんねんもん」


私は立ち止まって拗ねたように蔵ノ介の袖を引く

すると蔵ノ介も立ち止まった

─まあ私が袖を引いたからなんやけど



「…お昼に来てた子と一緒におった方が楽しいん?」

「………は?」

「めっちゃ楽しそうに話してたやん…っ私とおるよりあの子の方がよくなった…?」


あーあかん、私重い







いつからこんなに重たい女になったんだろう







涙がじわりと滲んで、それを隠すように蔵ノ介の背中に顔を押し付けた


「茜…」


すると蔵ノ介は体を私の方に向け、ぎゅうっと私を抱き締めた


「そんなことあるわけないやんか」

「っ…」


呻くような蔵ノ介の声に胸が締め付けられる


「…すまん、俺…嫉妬してた」

「……え?」


蔵ノ介の口から出たのは想定外の言葉で

私はとっさに蔵ノ介を見上げた


するとそこには困ったような蔵ノ介の顔が


「謙也が…お前の頭撫でてたやろ?」

「あ…」


お昼の…


「俺以外の男に…親しげに触らせんな」


懇願するように言われ、私は自然と頷いていた



すると蔵ノ介は自嘲気味に息を吐いた


「悪い…ほんま俺…どんどん茜が好きになっていってて…はぁ、独占欲強すぎるよな…すまん」



あ…一緒や…



「ううん…私も…蔵が好きすぎて余裕なんかない…他の女の子に笑いかけんといて欲しい、私だけを見て欲しい…なんて、あはは…重いよね」

「っ茜…」



私も自嘲気味に笑うと、蔵ノ介は泣きそうな顔で私を強く抱き締めた


私も強く強く、抱き締め返す


耳に押し当てられた蔵ノ介の胸から少し速い鼓動が伝わって、なぜか涙が溢れた







いつからこんなに涙脆くなったんだろう






──それはきっと、


蔵ノ介に恋をしてからなんやろうな







あなたが好きで好きで仕方がない


時に苦く切ない思いをするけれど





あなたと過ごす一時は、甘い甘い時間



11.微糖



「好きすぎて辛いぐらい好き」

「俺もや」







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