それは甘い20題 | ナノ








「いい天気やなぁ」

「せやなぁ」



気候も良好で優しい陽射しが暖かいある日のこと

私と蔵ノ介は天気もいいことだし屋上でお弁当を食べることにした



食べ終えて二人でまったりとまどろんでいると、ふと蔵ノ介が座る左側の肩に重みを感じた


「ん?」


そちらを見やると、私の肩で蔵ノ介がスヤスヤと寝息を立てていた


「寝ちゃったんや」


昼寝にはもってこいの陽気やもんなぁ


私は大人しく蔵ノ介に肩を貸していたが、身長差もあるためか少し姿勢が大変そうに思える


「…ちょっと動かしても大丈夫かな?」


そっと体を捩り、蔵ノ介を自分の膝に横たえた

蔵ノ介は起きる様子もなく私の膝を枕にして規則正しい寝息を立てている


「ふふっ」


何かかわいいなぁ


私は優しく蔵ノ介の頭を撫でた



ふわふわと髪を弄んでいると


「ん…」


蔵ノ介が小さく呻いてそっと目を開けた


「おはよ」


体勢上、上から覗き込むようにして蔵ノ介に声をかける


「ん…?あぁ…寝てもうたんか………って、っ!?」


ぼんやりと私の顔を見つめていた蔵ノ介の目がみるみる見開かれ、自分の置かれている状況を認識したのかカッと顔を赤らめた


「す、すまん…っ」


慌てて体を起こそうとするが、私はやんわりとそれを制止した


「いいよ?私がそうしたんやし、蔵疲れてるやろ?」


地域の大会を目前にして、いつも以上に練習に明け暮れていることぐらい分かっている


「やから休んで?」


ニコッと微笑むと、蔵ノ介は少し考え込んだものの


「じゃあ…遠慮なく…お邪魔します」


恥ずかしそうに私の体と反対側に顔を向け、再び私の膝に横たわった


「いい子いい子」


そう言って頭を撫でると


「子供扱いせんといてや…?」


蔵ノ介は少し拗ねたように見上げてきた


「ごめんごめん」


とは言っても無防備に私の膝で横になる蔵ノ介がかわいくてしかたがない


くすくす笑いながら再び蔵ノ介の髪で遊んでいると


「あーもう」


グルッとこちらに寝返りをうち、私のお腹に顔をうずめてきた


「ちょ、ちょっと…」


そしてすぅーっと深く息を吸い込んだ


「あー…茜めっちゃええ匂いするわ…」

「か、嗅ぐなっ」


一気に私は体が熱くなるのを感じた


私の様子を見た蔵ノ介はニヤッと笑って私の腰に手を回してますます顔を擦り寄せてくる


「んっ…くすぐった…」


はぁ、と浅く息をつくと蔵ノ介は動きを止めてムクッと体を起こした


「蔵?…んぅ」


どうかしたのかと問いかける前に私の口は蔵ノ介に塞がれてしまった


「悪い…もっと茜が欲しなってもうた」

「欲しいって…んんっ」


熱っぽい目で見つめられ、何度も何度も角度を変えて口付けられる


「んぅ、ぁ」


激しい口づけに意識が朦朧としてきたとき─



キーンコーンカーンコーン



「…」

「…」


昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り響いた


蔵ノ介ははぁーっと深い溜め息をつき


「もー…いつも邪魔されてばっかやん…」


と拗ねたように私の肩に額を押し付けた


私も少し名残惜しかったので


「蔵?」

「ん?…っ」


顔を上げた蔵ノ介にチュッとキスをした


「…戻ろっか?」

「…おん」


そうして私たちは手を繋いで屋上を後にした




──甘い甘い昼下がり



10.ひざまくら










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