これだから、女は
「今日から私もここの生徒になるのか…」
中1の春───
私は期待と不安を胸に、3年間通うことになる学舎に足を踏み入れた
ガラッ─
そして自分のクラスの扉を開けて、出席番号順にポツポツと埋まった席の合間を縫って、自分の席の椅子を引いた
ソワソワと辺りを見回してクラスメイトたちの様子を窺う
みんなと仲良くなれたらいいな
なんてドキドキと胸を高ならせていた私の頭上から、そんな気持ちを押し潰すかのように低い声が降ってきた
「あのさー、浮き足立ってるとこ悪いけど…そこさ、俺の席だろい?どいてくんない?」
「え…?」
慌てて見上げると、そこには気だるそうにフーセンガムを膨らませるキレイな赤色の髪の男の子が立っていた
え、うそ、席間違えた!?
慌てて黒板に書かれた座席表で自分の番号を探すと、確かに私の番号はもうひとつ前の席だった
「ほ、ほんとだ…!ごめん、すぐ退くね」
私は恥ずかしさから俯いたまま席を飛び退いたのだが、
「ったく、これだから女は…せっかちすぎだろ」
そいつがチッと舌打ちをついたのを私は聞き逃さなかった
…なにこいつ!?確かに間違えたのは悪いけどそこまで言う必要なくない!?
そいつは机に荷物を置くと、ドカッと席についた
私はプウッと密かに頬を膨らませながら本当の席に腰を落とした
私はすでに配布済みで手元にあったクラス名簿を取り出して自分の次の人物を探した
『丸井 ブン太』
丸井くんね…よし、覚えた
私は、彼の名前を指でトンッと叩くと、自分の肩越しにちらりと丸井くんを見やった
奴は依然としてダルそうにフーセンガムを膨らませては萎ませてを繰り返していて…
なんかちょっと、ヤな感じ
───これが私の、ブンちゃんに対する第一印象だった
one - end