「う、ん…」



窓から朝日が差し込む清々しい朝


私は自然と目が覚めた


目を開けると、いつものように大好きな跡部の顔が目の前にあって恥ずかしくも幸せな気持ちになる



気持ちが通じて、互いの親にも許嫁の話を受けると言って…正真正銘の婚約者になった私たち



スヤスヤと規則正しい寝息を立てる跡部は安心しきった顔で、思わず笑みが溢れてしまう


普段は俺様な跡部だけど、意外と可愛い面もあってそこがなんとも愛しく思える



そっと跡部に手を伸ばし、ツンッと鼻をつつくと、跡部は小さく唸ってうっすらと目を開けた



「あ、ごめん起こしちゃった?」


「ん…沙織」



そう言うも跡部の目は虚ろで、呻くように私の名前を呼ぶと、ぎゅっと私の腰を引き寄せて肩に顔を埋めてきた



「っ、あ、跡部…」



突然のことにドギマギしていると、跡部は一層顔を押し付けてきた



「…寝惚けてるの?」



小さく訊ねると、跡部は顔を離してしっかりと開かれた瞳で真っ直ぐに私を見つめて



「あーん?寝惚けてねーよ」



とニヤッと笑って不意に私の唇にキスをした



「んっ、……もう、跡部…」



不意打ちのキスに私の体温は急上昇してしまい、身を捩って跡部の腕の中から抜け出そうとするもがっちり捉えられてそれは叶わなかった



「あっ、跡部、もう起きなきゃ…」



跡部の胸を押してそう言うも



「あと5分くらい大丈夫だろうが、大人しくしてろ」



と抱き締め直されてしまった





付き合う前から思ってたけど、跡部って結構甘えん坊なんだよね…



満足げに私を抱き締める跡部を窺いながら私は緩んだ口角を隠すように跡部の胸に顔を埋めた












「おら行くぞ、早くしろ」


「まっ、待って!」



早々に身支度を済ませた跡部に急かされて私もバタバタと部屋を後にした






「お前、準備おせーよ」



跡部と玄関に向かう廊下を並んで歩いていると、跡部が何やら小言を言い出した



「なっ、乙女は支度に時間がかかるんですぅー!」



フンッと顔を背けると



「乙女、ねえ…お前には到底似合わねえ言葉だな」



と失礼なことにクックッとおかしそうに笑いだした



「もとはと言えば跡部が離してくれないからじゃん!」



ムッとした私はちょっと奴に噛み付いてやろうと反撃を開始した



「あーん?何だよ文句あんのか?」


「あそこで起きてたらゆっくり準備できるんじゃん」


「うるせぇな…俺様の勝手だろうが」



跡部は全く反省する素振りがない



「もー、そんなに私のことが好きなの?」


「っ、」



半ば呟くように言った言葉に、跡部の顔はみるみるうちに真っ赤に染まってしまった





……しまった、墓穴った





そんな跡部の様子に私もつられて赤面してしまう





うわぁ…やばい



その反応ってさ、大好きだって肯定してるみたいじゃん





「あーその…な、何でもないよっ」



慌てて取り繕うも、跡部はそれっきり何かを考え込むように黙ってしまった










斉藤さんの送迎の車の中でも、隣に座る跡部はどこかぼーっとしていて口を開かなかった





そうこうしている間に学校の前に到着してしまい、私は小さく溜め息をつきながら降りようと腰をあげた



「きゃっ、」



その時、グイッと跡部に腕を引かれた



「な、なに…っん」



いきなり何をするのかと抗議しようとした言葉は呆気なく跡部の唇によって阻まれてしまった


呆然とする私を尻目に跡部は唇を離すと



「…好きに決まってんだろうが、あーん?」



と私の耳元で囁くとさっさと車から降りてしまう



一瞬頭が真っ白になってしまったが、我に返ると慌てて跡部の後を追った



「跡部っ」



隣に並んで跡部の顔を窺うも、跡部は顔を背けてしまいどんな表情をしているのか分からなかったが、耳がほんのり赤みを帯びていた



「私も…好きだよ?」



無性に彼が愛しくなり思わず気持ちが口から溢れてしまう



「……知ってる」



跡部はそう言うと、ようやくこちらを向いて柔らかな笑みを私に向けてくれた





そんな些細なことで胸があたたかくなる








ああ、もう…日に日に好きが積もっていく



───跡部、大好きだよ








すべては君の言葉次第


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