WD〜財前の場合(財前)
「先輩?」

「なぁに?光くん」


夕日を背に二人で並んで下校中、光くんが私に声をかけてきた


「ちょっとそこの公園寄っていきませんか?」

「うん、ええよ」



どうしたんやろ?

光くんが公園行こうって言うなんて、珍しいな



なんて思いながらも彼の誘いは素直に嬉しかった








ちょこんと公園のベンチに腰をおろすと、光くんはガサガサと鞄から何かを取り出した


「…飴?」


それは可愛い小瓶に入った飴だった


「先輩…今日なんの日か忘れたんですか?」

「え?今日…?」


私が何かあったっけ?と首を傾げると、光くんはハァ…と小さく溜め息をついた


「ほんま先輩アホっすね」

「んなっ!今日って3月14日やろ?……………あ」

「やっと思い出したんですか?」


私が口を押さえていると光くんが呆れたように頬杖をついた


「ホワイトデー…」

「よくできました」


そう言って小瓶から飴を1つ取り出し、包みを開けて自分の口に放り込んだ


「え?それ光くんが食べんの…んっ!」


会話の流れからてっきりホワイトデーのお返しかと思っていた私が驚きの声を上げると、突然唇を塞がれた


「ん…っ」



光くんの舌によって何か固いものが口の中に押し込まれた


ほのかな甘みが口の中いっぱいに広がり、それが飴だと気付いた時には光くんの唇はもう離れていた



「甘い…」


「…もっと、甘くしてあげますよ」



悪戯な笑みを浮かべた光くんは再び私の唇を塞ぎ、舌を捩じ込んできた


私の口の中で飴を転がしては私の舌を吸い上げる


私も光くんの動きに応えようと必死に光くんにしがみつく


互いの唇が離れた頃には、飴はすっかり溶けて無くなってしまっていた



「…はぁ、はぁっ」

「はっ…先輩、真っ赤」


ふ、と微笑んだ光くんの顔がやけに大人っぽくて、私は話題を変えようと飴の入っている小瓶を手に取った


「でも、何で飴…?」

「ホワイトデーは飴やないですか」

「何か聞いたことはあるけど…」


小瓶の中身を手のひらに出して転がしてみる

と、1つだけ形が違う包みがあるのに気付いた


「なに…?」

「…開けてみてください」


光くんに言われるがまま、私は包みを開いた


「え…これ……」



包みの中には、華奢なピンキーリングが入っていた



光くんの方を見ると、彼はそっぽを向いていて─


…その耳は赤く染まっていて─



「ありがとう…!」



私は光くんに勢いよく抱きついた





彼の赤い耳に付けられたピアスが夕日を浴びてキラキラと輝いていた














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WD財前くん!
ホワイトデーって飴って言う…よね?
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