告白の練習(ブン太)
「ブンちゃん!これ調理実習で作ったの!…た、食べてくれる?」


私が調理実習で作ったカップケーキを差し出した相手は、テニス部の丸井ブン太くん


「ん?おぉっ!いいのか?さんきゅっ」


ブンちゃんはパァッと笑顔を浮かべ、私のカップケーキを喜んで食べてくれる

私もそんなブンちゃんを見て自然と笑みがこぼれる


「うめぇ!ありがとな、なまえ」

「どういたしまして」

「でも、いつもいつも悪いな…別に毎回くれなくてもいいんだぜ?…俺は嬉しいけどよ」


モグモグとカップケーキを頬張りながらブンちゃんが言う


「えっと…ブンちゃん、美味しそうに食べてくれるから」


ほんとは、好きだから…なんて
恥ずかしくて言えないけど…


「…そうか?」


へへっと笑うブンちゃんの笑顔に私はつい見とれてしまう


「あ!そうだ、今から真田のところに行かなきゃなんねぇんだった!悪ぃ、なまえ、またな……カップケーキまじうまかったぜ」


用事を思い出し、慌てて駆けていったブンちゃんの背中を見つめ、私はふぅ、とついため息を洩らしてしまった


「なんじゃ?なまえはまだブン太に告白しとらんのか?」

「きゃあ!?…に、仁王くん!?」


そこに現れたのはブンちゃんと同じテニス部の仁王くん


「っていうか…い、今なんて…!?」

「ん?じゃから、ブン太に告白…」

「だぁぁぁあ!!」


ちょ、ちょっと待って…!?
なんで?なんで私がブンちゃんのこと好きだって知ってるの!?


私が口をパクパクとしていると仁王くんはニヤッと笑う


「なまえは分かりやすすぎるんじゃ」

「なっ…じゃ、じゃあ…もしかしてブンちゃんも…?」

「いや?ブン太は気付いとらんじゃろなぁ」

「…よかったぁ〜」


ホッと胸を撫で下ろす私を仁王くんは不思議そうに見てくる


「なまえは今のままでええんか?」

「え?」

「さっきも言ったじゃろ、告白ナリ」

「えぇぇぇえ!?そそそそそんなっ…ここここ告白だなんてっ」

「ふっ、慌てすぎじゃろ」

「うぅ…」


そ、そりゃ…ブンちゃんの特別な人になりたいけど…こっ告白なんて…

…ムリムリムリムリムリ!!


赤くしたり青くしたり忙しなく顔色を変える私の頭をポンポン撫でながら仁王くんは


「なんなら練習相手になってやるぜよ」


なんてことを言い出した


「れ…練習?」

「そう、練習じゃ…俺をブン太と思って告ってみんしゃい」

「う…ん」

「ほら、何してんだ?早くしろよぃ」

「ブっ…ブンちゃん!?」

「プリッ」


い、今…仁王くんがブンちゃんに見えたような…

目をコシコシ擦りながらもう一度仁王くんを見る


「嘘でしょ…ブンちゃん…に見える」


さすがコート上の詐欺師…噂のイリュージョンってやつなの!?


「これならいい予行練習になるだろい?」

「う…うん」


いや、スゴすぎるでしょ…

っていうか何でこういう話になったの?


私は疑問に思いながらも、ブンちゃん…じゃなくて仁王くんに向き合う



「え…えっと…わ、わたし…ブンちゃんのことが…その…すっ、すっ…すすすすっ」

「テンパりすぎだろぃ」

「やっぱ無理だよぅ〜」

「だーめ、早くしろよぃ」


顔を真っ赤にしながら首をふる私の訴えも虚しく、ブンちゃんもとい仁王くんは早く早くと急かしてくる


「〜っ!ずっと好きだったの!」


覚悟を決め、思いきって言ったその時、背後でガサッと物音がした

慌てて振り向くとそこには…


「あ…わ、悪ぃ…聞くつもりじゃなかったんだけど…」

「えっ…ブンちゃん!?」


気まずそうな顔をしたブンちゃんの姿が


「なっ、何で…」

「や…用事済んだし…なまえまだいるかなって思ったんだけどよ…邪魔しちゃったみたいだな」

「えっ…?」


も、もしかして仁王くんに告白してると思われた?


「あっ…ちがっ…」

「あー…ほんと、邪魔するつもりはねぇから…じゃあな」


ブンちゃんはフイッと顔を背けるとその場を立ち去ろうとした

やだっ…!誤解なのに…!


「待って!」


私はとっさにブンちゃんに駆け寄り、その腕を掴んだ


「違うの…!仁王くんは私の練習に付き合ってくれただけで…私が好きなのは、ブンちゃんなの!」

「え…」


あーあ、言っちゃった…


「私が、なかなか想いを伝えないから…仁王くんが…その…」

「ちょ…待って…じゃあお前は…」

「うん…ブンちゃんが、好きなの…ずっと好きだったの…!」


ここまで来たら後には引けない

私はブンちゃんの顔を真っ直ぐに見つめながら想いを伝える


するとブンちゃんは、はぁ、と軽くため息をつき


「なんだ…そっか……」


何か小さく呟くと、ぎゅうっと私を抱き締めた


「ブンちゃ…」

「よかった……」

「え…?」


突然の抱擁に戸惑って腕の中でブンちゃんを見上げると、そこには至近距離に頬を赤く染めたブンちゃんの顔が


「これからも…俺にくれるか?」

「なにを?」

「…カップケーキ」

「え…も、貰ってくれるなら…」

「やった!」


ニカッと笑うブンちゃんに胸の奥があたたかくなる


「ブン太、肝心なことを言い忘れてるんじゃないか?」

「「わっ!」」


二人で微笑みあっていると忘れられていた仁王くんが口を開いた


パッと体を話して私とブンちゃんは顔を真っ赤にした


「か、肝心なことってなんだよ?」

「しらばっくれるんか?まだなまえに言っちょらんじゃろ?」

「……」


ニヤニヤと笑う仁王くんをじっと見つめたあと、ブンちゃんは真剣な顔をして私の方を向く


「そうだな、ちゃんと言ってなかったな…」


ブンちゃんは私の肩に手を置き、ふっと優しく微笑んだ


「なまえ、俺はお前が好きだぜ」

「ブンちゃん…」

「俺と付き合ってくれるか?」



私は返事の代わりにブンちゃんの胸に飛び込んだ





──そんな様子を見て仁王は

「全く、手のかかる二人じゃのう」

と肩をすくめた











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