VD〜謙也の場合/後編(謙也)
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あぁ…憂鬱や
あっという間に放課後
自慢やないけど休み時間の度に呼び出されてチョコを渡された
ありがたいけど俺が欲しいんはなまえからのチョコだけや…

ふぅ…と軽く溜め息をつきながら俺は部室へ向かった


「…なまえ?」

なんでテニス部の部室の前におるんや…?
あいつの本命てテニス部やったんか

「あ…!け、謙也!」

「なまえ…どうかしたんか?」

ほんまは聞きたないけど聞いてもうた

「う、うん、その…」

?なんや挙動不審やな

「こ、これ!謙也に…その、受け取って!」

「…は?なんや…ってなまえ!?」

押し付けるだけ押し付けてなまえはダァーっと駆け出した

「なんや…?あのクマさんチョコか…?」

ガサガサとその場でチョコの箱を開ける

「…っ!」

そこには俺が選んだハート型のチョコ
…あいつ、大事なこと何も言わんと渡すだけ渡しやがって…

俺は夢中でなまえの後を追いかけた



「待てっ!なまえ!」

「い、嫌や!追いかけてこんとってー!」

「ったく…」

俺はスピードを上げて一気になまえに追い付き、後ろからギュッと抱き締めた

「捕まえた…!浪速のスピードスターから逃げ切れる思たら大間違いや」

「け…謙也…っ!?」

「このチョコ…俺にか?」

「あ…当たり前や…」

「クマさんとちゃうけど…?」

「うん…」

「本命…やと思ってええんか?」

「…うん」

俺はなまえを抱き締める腕に力を込めた

「なまえ…俺、めっちゃ嬉しいわ…」

「…え」

「でもな、ちゃんとなまえの口から聞きたいんや…」

ちゃんと言ってくれ、まだ信じられへんのや…

「う……………す、き」

「聞こえへん」

「…す、すき」

「もっと…」

「も…もうええやろ!」

「あかん、ちゃんと目ぇ見て言うてや」

なまえの肩をつかみこちらに向けようとするが…

「やっ…だめ!見やんとって…!」

なまえは俺の腕の中でジタバタと抵抗する

「っこら、抵抗すんな!こっち向け」

「あっ…!」

無理矢理正面を向かせるとなまえの顔はこれでもかというぐらい真っ赤だった

「…っ!」

俺はその顔を見た途端衝動的になまえの唇をふさいだ

「ん…」

なまえはビクッと肩を震わせたが抵抗する様子はなかった

「悪い、我慢…できんかった」

唇をそっと離すと、俺は正面からなまえを抱き締めた

「…謙也……」

「…好きや、めっちゃ好きや…なまえ…」

「…うん…」

「ずっと前から好きやったんや…」

「…私も…謙也が好き…大好き」

俺たちはどちらからともなく顔を寄せ、キスをした
…とろけるような、甘い、チョコよりも甘いキスにしばらく酔いしれた





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