08.先輩と屋上
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「あー…ええ天気や」

テスト期間が終わり、今日からまた部活が始まる

せやけど俺は学校の屋上で流れる雲をぼーっと見つめていた

遠くからテニスボールの音が聞こえてくる

…休み明けやし行かなあかんなぁ

でも行ったら先輩おるしな…



『話したいこと、あるんやけど』



会ったらこないだ俺が聞きたくなくて逃げた話の続き聞かなあかんよな…


「あー!鬱陶しい!」

何を俺はウジウジしてんねや
こんなんらしくないわ


拒絶されたからって簡単に諦められるような半端な気持ちやないんや

悩んでもしゃーないな



「部活、行こかな」

「お、いい心掛けだね少年」

「せんぱっ…!」


突然聞こえた声に慌てて体を起こすと、そこには仁王立ちで腕組みをしている先輩がいた


「…ほんまいきなり現れますね…」

「えっへっへ」

先輩は得意気に鼻をこすった

「ほら、行くで!」

まだ座り込んでいる俺の手を取り立ち上がらせようとする先輩

俺は久々に触れる先輩のあたたかさに鼓動が早くなる


「…ほんま学習能力ないっすね」

「え…?わっ!」


そのまま軽く引っ張ると先輩は簡単に俺の腕の中に収まった


「ほんま隙ありすぎですわ」

「う…」

「前も言いましたよね?俺以外に隙見せたらあきませんよって」

「み、見せてへんもん!」

「でも実際、隙だらけですやん」


俺は逃さないように先輩をしっかりと抱き締めた


「ざ…財前くん…やから…」



………は?今、なんて…



「俺…やから?」

俺はうまく頭が働かず、腕の中の先輩を見つめた


先輩は顔をわずかに赤らめて横を向いていた

「財前くん…ずるいわ」

「……はい?」

「私が話したいことあるって言ったときは聞いてくれへんかったのに……またこうやって、私の…」

「…先輩の?」


触れ合う場所から先輩の鼓動が伝わる

俺の鼓動と重なりあい、どちらの鼓動か分からなくなる


先輩が顔を上げ、息がかかるような距離で切な気に揺れる瞳と視線が絡み合い…



先輩が口を開いたその時───…


『財前ー!どこやー!早よぉテニスコート来ーい!練習始まってんぞー!』

キーンと校内に謙也さんの声が響いた

『10分以内に来やんかったらお前の恥ずかしい写真ばらまくからなー!』

ブツッ…


……
………ありえへん
タイミング悪いにもほどがあるわ


「ふっ…ふふふっ…財前くん…行こか?」

先輩はおかしそうに肩を震わせ俺の腕の中から抜け出した


「はぁー…なんなん」

「いつもサボるからやで?」

「ちっ…」


また大事なこと聞き逃したやんか…
謙也さん、後で覚えといてくださいよ


俺は先輩の後を追ってテニスコートへ向かった




先輩と屋上

…先輩?

少しは俺のこと気にしてくれてるって思ってええですか?

……これって自惚れですかね






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