07.先輩と図書室
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先輩に無理矢理キスをしてから1週間、俺は一度も先輩と顔を合わせていなかった

…いや、見かけても避けるようにしてた

ラッキーなことに、あれからすぐにテスト期間に入り、部活は休み


別に必死に勉強しなくてもある程度の点は取れるし、いつもなら放課後は家でテレビを見たりゲームをしたりする

でも今回は何となくそんな気になれんくて、真面目に勉強してる

勉強しているとその間だけは先輩のことを考えんですむから─


というわけで、普段は利用しない図書室へと足を向けていた


ガラッ─…


図書室は同じ目的でやってきている生徒で割りといっぱいだった

俺は窓際に空席を見つけ、腰を下ろした

そして得意科目である英語の教科書を開いた


……先輩、英語苦手や言うてたなぁ…
こないだ一緒に買いに行った参考書使ってるんかな?


……全然あかんやん
勉強してたら先輩のこと忘れられるとか…
いつだって俺の中は先輩のことばっかや


集中できんくて、ふと顔を上げると向かい側には先輩が座っていて頭を悩ませていた

「…っ!」

…嘘やろ、気付かんと正面に座ってもうたんか?

先輩は気付いて…へんのか?


そっと様子を窺うと、先輩は英語と格闘していて周りのことなんて見えてなさそうやった


……あ、間違おてる

ふっと思わず笑みをもらすと、先輩がこちらを向いた

「あ……」

…まずい、どんな顔したらええんや


先輩は驚いたように目を見開き、何かをルーズリーフに書きだした


なんや?


そしてそれをすっと俺に差し出した


『財前くんが図書室来るなんて意外(笑)』

…失礼な


俺はムッとして同じ紙に返事を書いて突き返した

『俺みたいな天才は勉強しやんでも点取れるんで図書室は不要なんっすわ』


するとジトーッとした目で俺を見て、サラサラとまた何か書く

『あーそうですねー財前くんはアホな私と違って天才やもんねぇー!』

…字から悪意を感じるのは気のせいやないな


『それはそうと、問3間違ってますよ』

こう返すと、先輩はうそっ!?と小さく呟き、問題集を睨み付けた


『そこはー…』

俺は見ていられなくて簡単に解説を書き、先輩に渡した

先輩は俺が書いた解説を食い入るように見て、ああっ!と納得したように頷いた


そして口パクで

『あ り が と う』

と言って微笑んだ



……あれ、何で俺、先輩と普通に接してるんや?

…何で普通に接してくるんや?

無かったことにしたいんか…?
今まで通りにしたいんか…?


「…ぜんくん」

「…」

「財前くん?」


はっと我に返ると心配そうな先輩の顔

手元に目をやると、再びルーズリーフに何か書かれていた


『今日、一緒に帰らへん?話したいこと、あるんやけど…』

「っ!」



話したいことってなんや?

…こないだのこと問いただすんか?
それともやっぱり、今まで通りにしてくれって話か?


「すんません、今日はちょっと先帰りますわ」

乱雑に荷物をまとめ、俺は席を立った

「財前くんっ」


先輩が呼ぶ声がするが、俺は振り返らずに図書室を後にした




先輩と図書室

無理矢理キスしといて、先輩の話を聞くのは怖いなんて…

都合のいいやつやと思うわ

…俺は弱いな
拒絶されるのがイヤやからって先輩から目を背ける

勇気のない俺を、先輩は責めますか?






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