06.先輩と非常階段
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先輩を看病してから、俺は当然のごとく風邪を引いて2日学校を休んだ

2日ぶりの学校は何ら変わり映えのするものではなかったが、あの日以来先輩に会っていないため、どういう顔をして会えばいいのか分からない


少し重い足取りで校舎内を歩いていると

「あ!財前くん!」

…前方から先輩が小走りでやってきた

「あー…どうも」

「風邪もう大丈夫なん?心配してんでー?」

「もう治ったんで大丈夫っす」

「ほんま?よかったー」


…なんや?いつも通りすぎひんか?


「…先輩は、もう平気なんですか?」

「うん!」


よかった、いつもの笑顔や

俺の大好きな花なような笑みで大きく頷いたあと、ふと先輩の瞳が揺らいだ


「あの、ね?」

「なんすか?」

「もしかして…財前くんの風邪って、私のせい…?」

「……先輩…」

「私…財前くんと参考書見に行ったとこまでは覚えてんねんけど…その後のこと全然覚えてへんくて…」


…………は?今、なんて…


「あの日両親おらんかったのに次の日起きたら看病してもろた跡があって…もしかして財前くんに迷惑かけたんちゃうやろか…って思ってて…」

「……」

「そしたら財前くんも風邪で休んだやん?やから、あー私のせいかもしれへん!って思って…」

「ちょ…ちょっと待ってください…」

「?」


何も覚えてへんて?甘えてきたことも着替えのことも、キスのことも?


「全く覚えてないんすか?」

「う…ごめん……」

先輩はしゅんと小さくなった

「俺が風邪引いたのが何でかも分からんのですか?」

「それは…私の看病してくれたから…」

「鍛えてるんっすからそれぐらいで風邪引くわけないでしょ」

はぁ…とため息をついて言うと、先輩は

「じゃあ、なんで?」

と首をかしげた


「移るようなこと…したからでしょう?」

「移るような、こと…?」

先輩は何も思い当たるものがないのか視線を宙にさ迷わせ考え込む


「……そんなん、1つしかないでしょ」

「あっ!財前くん!?」

俺は半ば強引に先輩の腕を引き、人通りのない非常階段へと連れ込んだ


そして、先輩を壁に押し付け、両手を結いとめる

「えっ…財前く…?」

突然のことに戸惑いを隠しきれない様子の先輩に構うことなく、俺は先輩の唇を奪った

「んっ!」

何度も何度も角度を変え、執拗に先輩の唇を求める

「ふ…ぁ…」

舌で強引に口をねじあけ、舌を侵入させる

先輩は肩をビクッとさせ、絡めとろうとする俺の舌から逃げようとする

「んんっ…」

ようやく先輩の舌を捉え、絡めとる

だんだんと先輩の抵抗していた力が抜けていき俺は求めるがままに先輩の口内を犯した



「はっ…はっ………」

唇を解放すると先輩はへなへなとその場に座り込んだ

「はっ…、別に、初めてじゃないんすから」

俺は先輩の方を見ずに、乱れた呼吸を調える

「財前くん…な、んで…?」


「………先輩が、覚えてないのが悪いんですよ…」


─…先輩はきっと傷付いた顔をしている

俺は自嘲気味に小さく笑い、結局先輩の顔を見れずに非常階段を後にした




先輩と非常階段

…なんで?
なんでキスなんかしたん?


なんで…
そんな辛そうな顔するん?

分からへんよ…



強引だが優しかったキス…

麻由は財前の温もりの残る唇にそっと触れて財前が去っていった方を見つめた─…






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