05.先輩と看病
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「大丈夫っすか?」

「……ん」


一緒に本屋に行った帰り、突然倒れた先輩を彼女の家まで送ったはいいものの…


今日に限って両親共に留守かつ翌日まで帰らないときた


高熱で一人で立つことすら出来ない先輩を一人家に残すわけにもいかず、俺は親に電話で適当に言い訳をして彼女の側にいることにした

先輩をお姫様だっこで部屋まで運び、ベッドに横たえる

「ちょお待っててくださいね、今から風邪薬とお粥かなんか買ってきますんで」

「あ……ざ、ぜんく…」

俺が先輩から離れようとすると力なく袖を引っ張られた

「どうしたんっすか?」

「いかん…とって…?そばにおっ…て」

「っ!」


熱のせいで潤んだ瞳
荒い息遣い
甘えた声


「っ…すぐ戻ってきますから」

袖を握る先輩の手をそっと離し両手で包み込み、子供をあやすように語りかけると

「ん……はやく…かえって、きて?」

懇願するようにこう言われた

「…勿論っすわ」


俺は急いで看病に必要そうなものを買い揃えに走った





「これでしばらくしたら大丈夫やと思いますわ」

とりあえず、なんとかインスタントのお粥を食べさせ、薬を飲ませた

額と首もとの汗を拭ってやるが、俺は少し困っていた


…先輩、制服のままや

汗もかなりかいてるし着替えた方がいいよな…?


先輩の部屋を見渡すとタンスの前にパジャマと思われる服が綺麗に畳まれているのが目に入った

「先輩?」

「ん…?」

「着替え、できますか?」

「…がんばるけど…わかんない」

「…俺も手伝える限り手伝いますんで…着替えましょう?」

「うん…」


俺は、先輩の上半身をそっと起こし、ベッドの淵に座らせた

先輩はおぼつかない手つきでブレザーのボタンを外し脱いでいく

俺は、なるべく先輩を直視しないように心掛けながら靴下を脱がせる


「ざいぜんく…ん?」

「うん?」

「シャ、ツのボタン…でけへん…はずして?」

「っ……わかりました…じっとしててくださいよ」



落ち着け、落ち着くんや…

俺は胸が高なるのを必死で抑えながら先輩のシャツに手をかけ、1つ、また1つとボタンを外していく

はだけたシャツの隙間から、汗に濡れた白い素肌が顔を出す


今すぐ触れたい、触りたい、襲いたい

俺は男の本能をなけなしの理性で押し留める


パジャマを手に、先輩の後ろに回り込む

「…脱がしますよ」

「ん……」

先輩のシャツが肩からするりと脱げ落ちると気持ち良さそうな肌が露になる

お腹回りと背中の汗を拭き、そっとパジャマを羽織らせた

「…腕通してくださいね」

俺の言うことを素直に聞く先輩

ボタンをとめてやり、俺は深く息をついた


下はなんとか自分で履き替えてもらい、再びベッドへ横たえた


「ざ…いぜんくん?…ありが…と」

肩で苦しそうに息をする先輩

「先輩…苦しいっすよね…」

「…ん…でも、さっきより…ましやで?…ざいぜんくんの…おかげやね」

先輩はそう言うと弱々しく微笑んだ

「俺が…代わってあげれたらいいんすけど…」

辛そうな先輩の姿なんてこれ以上見たない


「……先輩の風邪、俺が貰ってもいいですか?」

「……え?」

ギシッ…

「じっと…しといてください」

俺は先輩の熱い頬に手を添え顔を近づける

「ざ…い………んっ…」

そして、そっと先輩の唇に自分の唇を重ねた

優しく、労るように先輩の唇を味わう

「はっ……ざい、ぜ………ふ、ぁ」

先輩が口を開いた隙にスルリと舌を口内に侵入させ、先輩の熱い舌を絡めとる

全てを奪い尽くすように…深く…長く…



「はっ…はっ…はぁっ……」

長いキスを終え、そっと唇を離すと、先輩はさっきよりも荒く肩で息をしていた

「…これで、先輩の風邪は俺が引き受けましたから…先輩は安心して寝てください」

「ざ……」

「ほら、目閉じて」

先輩が何か言いかけたのを無理矢理制し、片手で瞼を下ろす


「…しっかり休んで、元気な先輩に戻ってくださいね」


俺は、先輩が寝付くまで頭をなで続け、先輩が寝入ったのを見届け、先輩の家を後にした




先輩と看病

…これでも俺、めっちゃ我慢したんっすからね?

このお礼は…きっと、いつかいただきすんで

早よ元気になってください






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