04.先輩と風邪
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「ありがとうございましたー!」


部活が終わり俺はいつものように帰り支度をしていた

「財前、この後たこ焼きでも食べにいかんかー?」

「おごりっすか?」

「あほか、ちゃうわ」

「じゃあ今日は遠慮しますわ」

「なんや、つれへんなぁ」

「んじゃ、お先失礼しますー」

俺は謙也さんの誘いを断り、部室を出た

別にこれといった理由はないけど、なんとなく今日は食べに行く気分やなかった


「あれ?財前くんも今帰り?」

「先輩」

すると、ちょうど正門の辺りで先輩に声をかけられた

「なあ、今から暇やったりする?」

先輩はヒョイッと横から俺の顔を覗きこみ、聞いてきた

「暇っすけど」

「参考書買いに行くん付き合ってくれへん?」

「いいっすよ」

…あぁ、さっき謙也さん断っといてよかったわ



そうして俺たちは駅のでっかい本屋に行くことになった





ケホケホ…

「先輩、風邪っすか?」

「んー?空気乾燥してるんちゃうかな」

「あー確かに乾いてますね」

たまに咳をする先輩が気になりながらも、俺は二人で出掛けていることが嬉しくて仕方がなかった



「何の参考書買うんっすか?」

「んー…英文法」

「苦手なんっすか?」

「…うん」

「俺、英語やったら割りと得意っすけど」

「ほんま?すごいなぁ…」

「なんやったら教えますよ」

「学年下に教えてもらうほどアホじゃないもーん」

二人でやいやい言いながら参考書を吟味する

「あ、これ」
「これいいんちゃいます?」

同時に同じ参考書を手にし、手と手が触れあった

「あ…ご、ごめ…」

先輩は慌てて手を離し、頬を赤らめる

何だか目がトロンとしている気がするけど…

「…先輩?」

「あっ…こ、これよさそうやんな?これにしよかな」

パッと俺の手の中にあった参考書を取り、レジへと向かおうとする

「あっ…」

すると、ふらっと先輩は足元をもつれさせ俺の方に倒れかかってきた

「先輩っ!」

先輩は軽く俺の肩にもたれ掛かるとすぐに体勢を立て直した

「…えへへ、何もないとこで転んでまうとこやった」

そしてそのまま再びレジへ向かった

…ほんまに大丈夫か?なんかいつもと違う気がしてしゃーないんっすけど…





本屋を後にし、俺たちは下りのエレベーターに乗った

割りと大きな店舗なので、エレベーターに乗っている時間も結構長い

そんな密室のなか他の客の姿はなく、二人っきりに


「…財前くん?」

「……なんすか?」

隣に立っていた先輩が潤んだ瞳で見上げてきた

ただでさえこんな状況

胸の鼓動がやけに耳につく


「私…」

そのまま俺の腕にしがみついてくる

ちょ…それ以上はヤバイっすわ

先輩の少し荒い息遣いが聞こえ、俺は衝動的に先輩を抱き寄せた

「っ…先輩…!」


……先輩、なんやあつくないか…?


「はっ…も…だめ…」

俺が違和感を感じた瞬間、先輩が崩れ落ちた

「先輩!?麻由先輩っ!?」


俺は先輩が倒れないようにしっかりと抱きしめながら名前を呼び続けた



先輩と風邪

俺は意識が朦朧としている先輩を半ば抱き抱えるように支え、先輩の家へと向かった






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