02.先輩と保健室
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西日が差し込む保健室

俺はベッドに横たわりぼーっと白い天井を見つめていた

久しぶりに部活サボったわ…

何か行く気にならんかった


それは多分、先輩のせい





数十分前──

HRが終わり、俺はテニスコートへ向かっていた

「ん?あれは…先輩?」

少し先に先輩の姿を捉え、俺は気持ちが弾むのを感じた

「せんぱ…」
「麻由ー!」

声をかけようとした時、先輩の名前を呼ぶ声がした

その声の主は白石部長だった

先輩は部長の方を向くと満面の笑みを浮かべ、歩み寄った

そして二人で楽しそうに話しながら並んでテニスコートの方へ向かっていく

俺は少し距離を保ちつつ二人の後を追った

すると、先輩が段差に躓き部長の方へ倒れこんだ

部長はしっかりと先輩を抱きとめ心配そうに顔を覗き込む

先輩は恥ずかしそうに顔を赤らめ、部長から離れた



俺はそんな二人の様子を見てられへんくて方向転換して保健室へと向かい…今に至る




あんな顔、俺の前ではしたことないじゃないっすか

他の男に隙なんか見せんといてくださいよ



醜い気持ちだけがぐるぐるの俺の中で渦巻く

…って、彼氏でもないのにいっちょまえに独占欲か

目を閉じ、ふっと自嘲ぎみに笑みを漏らしたその時──


ガラッ


保健室のドアの開く音がした



誰が入ってきたのか確かめようと目を薄く開くと、視界いっぱいに先輩の顔

「うわっ!何してるんっすか!?」

「サボりの財前くんを探しに来たのだよ」

俺の顔を上から覗き込むようにしていた先輩は、ふふっと笑うと思いっきり俺の耳を引っ張った

「いたいいたい!痛いっす先輩!」

「せっかくこないだサボりが減って褒めたところやのに…まーたサボってー」

パッと俺の耳から手を離すと、よいしょと俺の体を起こそうとする

いや、無理っしょ…先輩華奢ですもん

「ざ、財前くん…重い…」

「先輩の力が弱すぎなんすよ」

「あ、言ったな!よぉーし…」

何かスイッチが入ったのか先輩は腕まくりをし、俺が被っていたシーツをひっぺがし床へ放った

「私かて財前くんぐらい起こせるもん!」

そしてもう一度俺を起こそうと背中に手を入れたその時─

「きゃっ!」

床のシーツに足を取られて俺に覆い被さってきた

「……」

「……」

先輩は俺の顔の横に両手をついて必死に踏ん張っていたが、息がかかるほど近くに先輩の顔があった


かぁぁっ…!

みるみるうちに先輩の顔が朱色に染まっていく

「ごごごごごめっ…すぐ退くからっ…!」

慌ててベッドから降りようとする先輩を引き留めるように俺は左右につかれた先輩の両手を掴む

「あきません」

「…っ!」

「もっと、その顔見せてください」

「な…なに言って…」

「さっき白石部長にも見せたんっすか?その顔」

「え!?見て…」

途端に動揺する先輩

……おもしろくない

「先輩ほんま、隙多すぎっすわ」

「そんなこと…」

「あります」

「う…」

「……俺以外にそんな隙なんか、見せたらあきませんよ?」

「え?どういう…」

先輩はパチパチと目を瞬かせている

「さあ?自分で考えてください」

俺はふぅ、とため息をついて先輩の手を解放した

これ以上この体制でおったら理性ぶっとぶわ

「先輩がうるさいから部活いきましょか」

「う…うるさいってなによ!」

先輩は慌てて俺の上から降りると、少し乱れた服を整えた

「さ、いきましょかー」

「ま、待って!」



さっきまでのモヤモヤはどこへやら

隣を歩く先輩を横目に、つい緩んでしまう頬

気付いてないでしょ?
もう、俺の世界は先輩中心に回ってるんっすよ




先輩と保健室

…先輩が探しに来てくれるんやったら、たまにはサボるのもええかもな






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