01.先輩と俺
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大阪、四天宝寺中学─
その放課後の校内は部活動で活気づいている


パァーン…!パァーン…!

テニスコートでは激しく打ち合うボールの音や掛け声が響いていた


「よっしゃ、休憩!各自しっかり水分補給しぃや!」

「お疲れ様でーす」

しばらくして休憩に入り、マネージャーの麻由が部員にスポーツドリンクを配って歩く

「はい、財前くんもお疲れー」

そして俺の元にもやってきてコップを差し出した

コップを受けとるとき、わずかに手が触れあった

「……どーもっす」

だが先輩は全く気にしたそぶりを見せない

…ってか全く意識してないんやろな

「前はよぉサボってたのに最近真面目に頑張ってるやん」

人の気も知らずに、えらいえらい、と俺の頭をグシャグシャと撫でてくる

「…やめてください」

「えー?褒めてるねんで?私も財前くんが練習参加してくれて嬉しいし」

ほんま、人の気も知らずに…

俺がサボらんと練習に参加してる理由が自分なんて思いもしてないんでしょ?

はぁ…

「…なんでやと思います?」

まだ俺の頭にある先輩の手を掴み、正面から先輩の目を見つめて尋ねると、わずかに先輩の瞳が揺らいだ

「財前く…」

「おーい麻由ー!早よぉワイにもちょーだいやー!」

「あ…はーい!ごめーん!」

金ちゃんに呼ばれ、はっと我に返った先輩はパッと俺の手を離し、呼ばれた方へ駆けていった

…タイミング悪いわ



その後も先輩は部員にドリンクを配り歩き、明るい笑顔を振り撒いていく



…いつからやろ、俺にだけその笑顔を向けてほしいと思うようになったんは


いつの間にか目で追うようになってて、いつの間にか好きになってた


先輩はこれっぽっちも俺のこと、男やなんて思ってないやろな…


ま、そんなんはどうでもええんすけど


思ってないなら、思わせるだけや



先輩と俺

俺を本気にさせたんや、覚悟しといてくださいよ?先輩








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