先輩と文化祭
bookmark



ガヤガヤと生徒達が浮き足立って最終調整に追われている


四天宝寺中学文化祭開催を目前にして、白石部長に呼ばれた俺は渋々指定された教室へと向かっていた



俺たちテニス部は確か喫茶店をやるらしい



準備はめんどくさくてほとんど顔を出していなかったため詳しいことは知らない





「おはようございまー……、す」


ガラガラと扉を開けると飛び込んできた光景に俺は絶句した


「おー財前やっと来たな!」

「んもう、光きゅんったら全然準備に来ないんだもの〜」

「財前の分はこれやで」


そこには執事服を身に纏った先輩たちの姿が


「え?光くん?」


そして黒いカーテンで仕切られた奥からヒョコっと顔を出した麻由先輩は──


「っ!」


メイドの格好をしていた

しかも猫耳としっぽというオプションつきである


「……先輩、何やってるんですか?」


自分でも驚くほど低い声が出たが、それに構わず先輩に歩み寄る


「何って…ウェイトレスの服やねん…」


少し恥ずかしそうに頬を赤らめて短いスカートの裾を引っ張る



…ちょっと露出度高すぎとちゃいますか?



大きく開いた胸元にフリルがいっぱいの短いスカートにニーハイ…



ほら、謙也さんやって麻由先輩のことチラチラ見てるやないですか



「え、と…似合う?」


おずおずと先輩が問いかけてきたため、俺はハッキリこう言った


「似合いません」

「えっ…」


先輩はショックを受けたように俯くが構わない


「部長、ちょっと麻由先輩借りますね」

「ん?ちょ、財前!?」


有無を言わさず先輩の腕を強引に引き、教室を出た








「ひ、光くん?どうしたん?」


無言でズンズン歩いていく俺に不安そうな先輩



廊下を歩いている間にも、作業中の生徒たちが先輩に目を奪われているのが分かる








─ガラッ


人気のない空き教室に先輩を押し込む


「ひか…」

「何考えてるんですか?」

「え?」


後ろ手にドアを閉めた俺は戸惑う先輩に質問を続ける


「そんな格好して…どういうつもりですか?」

「え…だって客引きのためにこれ着てくれって…」


威圧的な俺の様子に先輩は小さな声で答えた


「どうせ先輩たちに押しきられたんでしょう?その格好で人前に出て接客するつもりですか?…そんなん俺が許すわけないでしょう」


俺が怒っていると感じたのか、俺がゆっくり先輩に近付くと先輩はジリジリと後ずさった


「あっ」


すぐに先輩は壁に達し、逃げ場を失う


ドンッと先輩の顔の横に両手をつくと、先輩はビクッと肩を震わせた


「ひか…んっ」


少し涙目で俺を見上げてきた先輩に俺は噛むつくように唇を塞いだ


舌で強引に口をこじ開け、呼吸を奪うように深く激しく口内を犯す


「んんっ、ふ…ぁっ」


舌を強く吸い、唇を離すと先輩は虚ろな目で俺を見ていた


「光、くん?」

「何で俺がこんなことするんか、分かってます?」


耳に唇を寄せて囁くように言うと、先輩は少し体を捩らせて首を小さく横に振った


「はぁ…やからいつも言うてるでしょ?先輩は、無防備すぎるって」

「へ?…ぁっ」


そのまま首筋にねっとりと舌を這わせると先輩は体をビクンと跳ねさせた


大きく開いた胸元に唇を寄せ、服から溢れた胸の膨らみに強く吸い付く


「やっ…!」


唇を離すとそこにはキレイに赤い印がついていた


「…見えちゃいますね?」


先輩の胸に顔を埋めたまま見上げると、先輩は瞳を揺らした


「こっちにも…」


そして反対側にも同じように印をつける



見える場所に咲いた赤い華



「これでもう、こんな露出した服着れませんね?」

「……え?」

「…こんな服で俺以外の男の前に出ようと思ってたんでしょ?そんなんダメに決まってるでしょう」


俺が言うとようやく俺の行動のわけを理解したのか困ったように眉を下げた


「でも…頼まれたから…」

「…だから、接客中にこんなんされたりしたらどうするんやって言うてるんですよ」


ス、と短いスカートから伸びる足に手を滑らせる


「ぁっ!」

「先輩は自分の魅力に無自覚すぎるんすわ」


話しながらも先輩の内腿をまさぐると、先輩はビクビクと体を震わせる


「ま、こんなにハッキリ所有印ついてたらもうこの格好で接客とか出来ませんよね?」


ニヤッと笑って言うと


「あ…」


先輩は真っ赤に顔を染めながらもようやく納得したようだった


「じゃ、そろそろ戻りましょか、先輩らうるさいやろうし」


名残惜しかったがパッと先輩を開放すると、先輩はふにゃっと体を俺の方に傾けた


「っと…」


そのままぎゅうっと抱き付いてきて


「ごめんね…?」


と目に涙をためて謝ってきた




…自分が今どんな格好してるか考えてくださいよ

止めれんくなるでしょう




「……さっき似合わへんって言ったの、嘘ですわ」

「…え?」


先輩の方を見ずにそっけなく言うと気配で先輩が首を傾げたのが分かった


「似合いすぎて…先輩が可愛すぎて、他の男に見せるんがめっちゃ嫌やって思いました」

「光くん…」

「せやから、その格好でウェイトレスするのやめてください」

「…うん」


俺の胸に顔を擦り寄せる先輩が愛しくて、俺は強く先輩を抱き締めた










先輩らの所に戻ると、先輩につけた印を見て謙也さんは顔を真っ赤にして、白石部長は困ったような笑みを見せた



結局麻由先輩は俺の分の執事服を間に合わせで少し絞って着ることになった



結果的に執事姿の先輩達目当ての女性客だけでなく、麻由先輩の執事姿目当ての男性客も多く訪れ、大繁盛ののち文化祭は幕をおろした


先輩に変な虫がつかないよう、俺は終始気を張り巡らせていたことは言うまでもない










片付けや軽い打ち上げを終え、俺は麻由先輩を家まで送り届けた


「ね、さっきから気になっててんけど…その紙袋なに?」


すると先輩が俺の持っていた紙袋を指差して言った


「ん?先輩が着てたメイド服ですよ。白石部長に頼んで譲ってもらいました。今度俺だけのために着てください、ね?」


先輩の頬に手を添えて言うと


「………うぅ」


先輩は真っ赤になって俯いた




先輩と文化祭


先輩を独り占めできるのは俺だけや

もう二度とあんな可愛い姿なんか見せたれへんわ







[戻る]
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -