先輩の悩み
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「し、白石?その…部活終わり、時間ある?」

白石がテニスコートの隅で靴紐を直していると、麻由がおずおずと近づいてきた

「あるけど、どないしたんや?」

麻由が誘ってくるなんてえらい珍しいな

「その…相談があんねんけど…」


あぁ、財前のことか

「ええで。ほんなら部活終わってから駅前でな」

納得した白石は快く了解した









「で、どないしたんや?」

駅前のマ○ドに入り、向かい合って座る白石と麻由

「その…財前くんのことやねんけど」

やっぱりなぁ

「財前とケンカでもしたんか?」

「ケンカ…じゃないねんけど…その…」


始めはためらいがちだった麻由だが、白石がじっと麻由が話すのを待っていると、ポツポツと話し始めた

「実は─…」








2週間前──

麻由は財前の部屋で英語の勉強をしていた

「まあ、だいぶ解けるようになったんちゃいますか?」

「うん!財前くんのおかげやね!」


しばらく頭を悩ませていた問題を解き終え、麻由はうーん、と伸びをした


「疲れたぁ…もう英語見たないー」

「…じゃあ俺だけ見るってのはどうですか?」

「え…?」


そう言ったときにはもう財前の顔は目の前に迫っていて、導かれるように目を閉じると柔らかい感触に包まれる


唇が離れ、そっと目を開けると財前の熱い瞳と視線が絡み合う



「財前くん…」

「先輩…」



もう一度軽く唇が重なり、離れては触れるようなキスを繰り返す


「ん…」


次第に財前の動きが激しさを増し、麻由の呼吸が荒くなる


そして、求めあうことにより生じた隙間から財前の舌が侵入する

深いキスは何度もしてきたが、一向に慣れない


キスに夢中になっていると、財前にキスをしたままそっと押し倒された


…ん?


麻由は背中に床の固さを感じながら、ふと我に帰る


その時、財前の右手が服の上から麻由の胸に触れる


…んんん?


いつの間にか財前の唇が麻由の首筋に降り、左手がスカートの中に侵入してきた


…んんんんん!?


「ちょ…ちょっと待ったぁぁぁぁぁ」



突然の事態に動揺してしまった麻由は思わず財前を突き飛ばしてしまった





あ、やばい





そう思った時は、時すでに遅し


突き飛ばされた財前は驚いたように目を見開き呆然としていた


「あ…あの……」



麻由が慌てて起き上がると財前ははっと我に帰り


「あー…休憩はこれぐらいにして、勉強しましょか?」


麻由から目をそらすと机に向かった



や、やってしまった……

















「それからやねん…見た感じはいつも通りに見えんねんけど、キ…キスだって軽いのばっかで……」

「なるほどな…」


麻由から事情を聞いた白石は軽く息を吐いた


「ど、どうしよう…?やっぱり…気にしてるやんな?」


しょぼんと肩を落とす麻由を励ますように優しく頭を撫でる白石


「せやな…男は特にそういうん拒絶されんのが一番こたえるんや」

「……」


そして白石は麻由の頭から手を離し、麻由をじっと見つめる


「麻由は…財前とそうなるんが嫌なんか?」


「…イヤじゃ、ない……付き合いはじめて結構たつし…財前くんと、そうなってもいいかな……って覚悟は出来てる…つもりやってんけど…」

「まあ、麻由のことやから突然でビックリしてもうたんやろ?」

「…うん」

「今言ったことを財前にも言ったりーや」

「えぇっ!?む…無理っ…」


一番の解決策を示すと、麻由は顔を赤らめて首をぶんぶん振る


「じゃあ態度で示すしかないなぁ」

「どうやって?」

「この先財前となんか予定あるか?」

「…次の日曜日に、また家行くねん…」

「ちょうどええやんか、その時に頑張って財前誘い」

「さ…誘うって!?」

「誘惑するってことや」


麻由の顔は真っ赤に染まってしまったが白石は気にせず続ける


「財前とそうなりたいんやろ?」

「うぅ…」

「1回拒絶されたらなかなか手なんか出されへんねや…せやから麻由が頑張るしかない、分かるな?」

「……はい」

「財前のためにも頑張りや」

「…はい!」


そう頷いた麻由の瞳には決心と覚悟の光が灯っていた






先輩の悩み


財前くん、こないだはゴメンな…

私、頑張る!






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