「円堂くん、村上さんのことなんだけど…」
「あぁ美里か?アイツってば本当可愛いよなあ!今じゃ恥ずかしがってツンツンしてるけど小さい時なんか泣き虫でいっつも俺の後ろばっかくっついてたんだぜ?たまにはデレもほしいよなぁ。いやでもツンツンしてるのもいいよな!あああ好きだー!!なんだかんだたまーにデレるのもまたいいよな!この間なんか──……」
とりあえず円堂くんにこの話をさせると止まらないことがわかった。
こんな円堂くんが羨ましかった。俺だって真っ正面から村上さんと話してみたい
俺だって村上さんをこんなにも好きなんだ。好きなんて言葉じゃ収まりきれないくらい
俺が始めて彼女を知ったのは丁度3年前くらい。FFIの合宿の時だった
村上さんはたまに合宿場に来ては差し入れを置いて行く
しかし、円堂くんやマネージャーたちと少し話してはすぐに帰ってしまうのだ
でも、いつだか一度だけ話したことがある。多分彼女は覚えてないだろうけど…。
たまたま休憩中に来た彼女を円堂くんたちが皆に紹介した時だった
ただ一言二言だったけど。そして最後に彼女は言ったんだ
「頑張って下さい」「一生懸命応援してます」と
それはありきたりな言葉であったけど、すごく嬉しく、励みになったのを覚えている
それからずっと、彼女に恋い焦がれていた
高校に上がった当時、クラスが別だと知った時はすごく落ち込んだ
それでも休み時間や移動教室の時など、いつでも暇があれば視界で彼女を探し、見つけては目で追っていた
ある日、そんな俺に好機が訪れた。
廊下を歩いてると ドン、と誰かにぶつかってしまった。急いでいたのだろうか、結構勢い良くぶつかり互いに尻餅をついてしまった
我ながら情けない
ぶつかった相手とはまさに村上さんであった
慌てて起き上がり手を差し延べると「ありがとうございます」と恥ずかしそうに手をとった
正直俺は内心興奮状態。気を抜けば息が荒くなるんじゃないかというくらいに高ぶっていたのだ
ちなみに尻餅ついたときに見えたんだけどパンツは淡い水色だった
それから翌年、つまり先日
またさらに好機が訪れた
彼女、村上さんと同じクラスになったのだ。席は離れているものの、そんなものはいくらでもチャンスはある
俺は村上さんに積極的に話しをしていこうと決めた。あくまで健全に。
しかしそこには壁があった
それというのは、今も尚彼女について興奮気味に語り続ける円堂くんだった
円堂くんが村上さんにくっついてあんなことやこんなことをしているのは知っていた。むしろ校内では知らない人のほうが珍しいだろう
そんな円堂くんを見ていると俺のなかのアレが抑えられなくなってくるのだ
「あ!美里ーっ!」
「ぎゃあ!!くっつくなバカタレ!!」
ほら、村上さんを見つけた途端に話しを止め彼女に飛び付いた
俺だって抱き着いて、ほお擦りして…… おっと。
「や、村上さん」
「うぇ?!きききき基山くん…!」
「きが多いよ」
思わず頬の筋肉が緩みそうになるのを抑えて歩み寄る
ああ可愛いなぁ……
しかし俺はやってしまった
ズリッ
ガシッ
むにっ
──…あ。
少年Kの心情(ああ、暖かい…)(柔らかい……)
‐‐‐‐‐
基山くんの一人称て俺だよね…?間違ってたらこっそり教えて下さい…
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