最後のページにあるのは
最初に見た二人で写ってる写真と、ヒロト、風介、晴矢、玲名、私のいつもの5人で写ってる写真

どちらも卒業式に撮ったもの。


写真に写る若き頃の自分をさらりと撫でた




結構あの頃の私は卒業式を迎えても自分の想いを伝えることなく青春の幕は閉じてしまったのだ。



玲名とは大学すら違かったけど今だに親友をやってたりする

でも、彼とは今はもう会うことすら、ましてや連絡なんてものも滅多にしなくなった。


楽しかったけど後悔だらけの青春だったなあ


それでも、

今もしっかりと思い出す。

このページも、

あの時のページも。



全部全部私の初恋だった


あ、この事は


秘密だよ?




それも今となってはいい思い出だ。確かに当時私達は想い合ってたはず。
思考はポジティブなくせに意気地なしでうじうじしちゃってたけどね。



彼の長い物語の中に、少しでも私はいられたのかな……なんてね

多分、長い長い物語の中で一際輝く高校生時代のページは、彼も私も多分似てる、重なってたはず

彼も同じ気持ちだったのかな?


なんて、もう子供じゃないし今さら考えてもしょうがない事なんだけどね。




さて。この素敵な、大好きだった恋と思い出の本を閉じて、鍵をかけましょうか。



ふ、と窓を覗けば外は暗くなっていた。ついついこういうの発見するとガッツリ見ちゃったりしてダイブ時間くっちゃうんだよね

やらかしたなぁ、と小さく呟き苦笑いをおとす。


散らかっていた物を、今日の夜はどうしようか、など考えつつ片付ける


そうだなぁ、今日はオムライスにしようかな。









翌日、私はいつも通りに仕事場に向かう。昨日はちょっと絵本と言う名のアルバムを見て気持ちだけ若返った気分めしたけど、

こう外に出てみれば日常はいつものように回っていて。


近くを歩いていた学生達を見てほっこりした

同時に羨ましくも思えた
改めて私は大人なんだと感じる。そんなのだいぶ今更だけどさ。



私の今の職業というのはケーキ屋。まあ私がケーキ作ってる訳じゃないんだけど……

案外この仕事はすごく好きだったりするのだ。だからそれなりにエンジョイしているつもりだ

お客さんに ありがとう と笑顔で言われるだけで凄く嬉しいのだ。



さて、今日も開店の時間です。



──チリンチリーン…


「いらっしゃいませ!」


入ってくるお客さんにとびっきりの笑顔を。



「あれ、かずほ……?」

「えっ?」


思わず名前を呼ばれ肩を揺らす。よく相手の顔を見てみれば……


そこには懐かしい赤のチューリップ



「晴、矢…?」



とく、
  とくとく、
 とくとくとく


心臓が早くなり血液が体全身を駆け回るのを感じた

ゴクリと喉をならす。




残り、10cmの勇気があったなら。



fin.



 

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