ついに授業が終わりSHRも終わる……。こんなに放課後が嫌だと思った事はない。

運良く今日は掃除の割り当てはあたってないので終わればすぐ帰れる。


「それでは皆さん、さようなら。」


先生の挨拶を合図に教室はガヤガヤと騒がしくなる。私はアイツが来る前にさっさと帰ってしまおう、すると私を呼ぶ声が大きく廊下に響き渡ると声の主は物っすごい笑顔で私に駆け寄る


「村上!」


シン、と廊下が一瞬静まり周りの視線が私に集まる。それが嫌で私は俯いてしまった。


「……?どうしたんだ?」


彼は何もわかってないようで、そんなのお構い無しに普通に話かけてくる。


「なんでもないわよ……。」

「そっか!んじゃ帰ろうぜ!」


お決まりのにかっ!と笑顔頂きましたー。

すると彼は私の返事なんか聞かずに手をぎゅっと握るとずんずんと進んで行く


「ちょ、手……!」


それを見て周りが騒がしくなる。あちらこちらから「あいつら付き合ってたのか?」「円堂と……もう一人は誰だ?」「たしか村上……だったか?」など色々言ってる中である集団を見つけた。

あれはよく円堂と一緒にサッカーをしてる人達だ。
「へぇ、円堂が……」と呟いた人と目が合う。するとニヤッと怪しく微笑まれた。……あまり良い気分ではない。






円堂は校門を出ても手を離す気配はない。

「帰る前に寄りたい所があるんだ!」


と彼は勝手に話を進めていく。ここで反論したところでどうせ話を聞かないのだろう、いつものようにシカトをする。


すると意識は自然的に繋がれている手にいった。


結構、手大きいんだなぁ……。大きくて、ゴツゴツしてて、見た目と違いすごく男らしい手だった



……って!何考えてるのよ。私はコイツが嫌いなんだから。


「ぅぶっ……!」

あーだこーだ考えていると円堂がいきなり止まり、顔が背中にぶつかる。


「ははは!ごめんな!」


まあそこに座れよ、とさされたベンチに座る事にした。

近くには大きな木があってそこにはタイヤがぶら下がってあった。


「ん?これか?これはな、俺の仲間なんだ!俺がサッカーでキーパーをやり始めてからずっとコイツと練習してきたんだ!」


ふーん、と話を聞く。彼は凄く優しい表情をしていて、それでなんだか楽しそうだった。



「ここ、凄くいいだろ。稲妻町全体が見渡せるんだ!夕方あたりとか日の沈む瞬間とか見れてすげーんだぜ!」

と熱く語ってくれた。


確かにここは凄く良いところだった。ここで、読書なんか出来たら気持ちいいんだろうな……なんて。

放課後はたまにここで読書をするのも良いかもしれない。私なりに凄く気に入っていた。


「俺、練習以外でもここに良く来るんだ。暇な時でも、ちょっと落ち込んだ時でも、ここに来て深呼吸するとすんげー落ち着くんだ!」


「ここ、凄く良い所」

「だろ?!わかって貰えてよかったよ!村上に知っておいて欲しかったんだ、俺の大好きな所だから」


彼の微笑みに釣られて自分も思わずふっ、と笑みがこぼれた

それを見たであろう円堂はバッと顔を逸らす。なんだ、失礼なやつめ。やっぱり嫌いだ。


「……なによ」

「い、いや!わるい!なんでもない!」


変なヤツだ。けど、ここを教えてくれた事には感謝しようと思った。


ここにずっと居る訳にもいかないので腰をあげると円堂も慌てたように立つ。


「送ってくよ!」

「いい。」

「遠慮すんなって!な!」


そうだ、コイツはこういうヤツだった。





(村上の笑った顔初めて見た……)(しかもか、可愛かった……!)





‐‐‐‐
落ちと文才が家出したまま帰って来ない。




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