いつものように過ごす毎日。良い家族と良い仲間に恵まれ、日々楽しかったし不満なんて全然なかった。


今日もいつものように過ごすのだ。

だけどその日は、少し違った。



部活の時、得に理由もなく、なんとなく。なんとなくだ、校舎を見上げる。


「……!」


それもたまたま偶然、図書室あたりの窓に目がむいたのだ。もともと視力は良い方だか、今日はなぜだか余計に視界が明るかった気がした。

そこには凛としていて、落ち着いた雰囲気の子がいた。
その横顔はなんだか少しはかなげで、瞬きをしてしまえば次の瞬間には消えてしまうんじゃないかと思った。


なぜだか俺は、その少女をずっと眺めていたかった。




それから次の日も、その次の日も少女は図書室に現れる。

それを毎日毎日見る、それはいつのまにか俺のいつものように過ごす日課に組み込まれていた。


もうこの時には既に、俺はクラスも名前も声も知らない少女に惹かれていたのだと思う。気がつけば何時もその子の事を考えていた。こんな気持ちは、初めてだ




ある日ふ、と思った。
あの少女と話してみたい



思い立ったらすぐ行動。俺は近くにいたマネージャーの秋にトイレだと嘘をついて抜け出した。

目的地は、図書室


図書室の前で深呼吸をして心を落ち着かせる。そしてそっと扉の取っ手に触れ、開く



──ガチャ



図書室の中を見渡すと窓際に、しっかりとその女の子がいた。

高ぶる胸を気持ちで押さえ付け、ゆっくりと歩み寄る。


「なぁ、」


のそりと振り返った少女は俺を見て、すごく驚いた表情をしていた。次にグッと眉間にシワを寄せると、渋々と言った感じに口を開いた


「何、」

言葉を返してくれた喜びに俺はまた胸を踊らせた。
はんめん、いきなり話しかけて迷惑ではなかっただろうかという不安が過ぎるも話しを進める


「どうしていつも図書室に居るんだ?」


唐突だっただろうか、少女は更にシワを深めた。


「どうして。」

「えっと……いっつもグラウンドから見えててさ、気になったんだ」

少女の問いに軽く苦笑いしながらポリポリと頬をかきながらぎこちなく答えた


「それでここに来たの?」

「そうなんだ!ずっと話したいと思ってて。俺、円堂守!君の名前は───」


会話のキャッチボールが出来ていることに、さらに胸を踊らせた俺は一応挨拶と一緒に名前を聞こうと思って発した言葉に被り彼女が口を開く



「──私、貴方の事嫌い。」



「えっ……」


今、なんて……?

彼女言葉が頭をループする。俺の事が嫌いだと。やはり迷惑にあたっていたのだろうか。謝罪をのべようかと思うが先に彼女のほうが「それじゃ。」と出て行ってしまった。



納得が行かない。しかしただ一回嫌いだからと言われただけで諦める俺ではなかった。



迷惑かけていたか、もしくは気に障るような発言をしてしまっていたのか、それならば謝ろう。


本当に俺の事を嫌いと言っているなら、好きにさせるまで。


「おっし!」


パン!と両頬を叩き、気合いを入れ晴れた気分で部活へと戻った。




(円堂のやつ、トイレから帰ってきてからやけに機嫌よくないか?)(そう?いつも通りに見えるけど……)(いや確かに機嫌がいいな。)(何かいいことでもあったんだろ)




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