今日の円堂は、なんだかそわそわしていた。よくわからないけど落ち着きのない感じであるのは確かだ。


「円堂」

「ん?」

「どうしたの」

「何がだよ?」

「……」


自覚がないのか。

円堂の貧乏揺すりが止まらない。


「なんで落ち着きないの」

「え?いや、うんと……そんな事ないぜ?」


にへらと苦笑いを浮かべる。このようなやり取りも何回目だろうか。

話せば何か言いたげなそぶりを見せるけど結構言わずにごまかす。
ちゃんとごまかせているつもりなのだろうか。


しかし大好きなお弁当を食べる箸も止まったままで。明らかに変な状況であった


「何か言いたい事でもあるの?」

「えっ?」

「言ってくれなきゃ分からないんだけど…。」


円堂はくわっと目をかっぴらく。そんなに驚く事でもないだろうに……。

しかしそれもすぐに考える表情に変わり軽く俯く。

……もしかしたら私の予想が外れていただけなのかもしれない。


少し気にはなるが、そろそろお昼も終わる頃なので教室に戻ろうとベンチから腰を上げた時、


──パシッ


手首が掴まれた。円堂によって。その顔はよく分からない表情をしていたけど、何かを心に決めたような、そんな表情をしていた


「……何?」

「あ……、その、」

「……?」

「放課後、一緒に帰らないか?部活待ってもらう事になるけど……」


なんだ、そんなことで円堂は悩んでいたの?たいしたことでもないのに、むしろ昨日までなら強制だっただろう

疑問は残るが特に断る理由もなかったので了承することにした









「村上!待ったか?」

「いや、大丈夫だよ」

「そっか!んじゃ行こうぜ!」


行こうというのはつまりいつもの鉄塔広場だろう。もうお馴染みである。
それに、この時間帯の鉄塔広場は夕日が凄く綺麗なのだ。日の沈んでいく様も素敵だったり



「なぁ村上、話聞いてくれないか?」

「……うん」

「俺、村上が好きだ!」

「えっ……う、そ…」

「いや、本当だ」


円堂が私をジッと見つめる。恥ずかしい、顔が熱くなり俯く

すると円堂はガシリを私の手を握り、視線をそらすことなくもう一度口を開いた


「村上、好きだ」


いつもより少し低めのトーンで、力強く。キリッと逸らされる事のない視線


「村上、こっちを見て」
「俺と、つ、付き合ってくれないか…?」

「でも、私……」

「ん?」

「地味だし、モブだし目立たないし、性格だって捻くれてるし…」

自分で言っていて凄く残念だ。思わず涙目になる

「村上は自分を過小評価しすぎなんだ!周りからどう見えてるかわらないけど、俺から見て村上はすっげー輝いてるぜ!」
「良いところも、悪いところも俺が全部うけとめてやる!」
「それくらい、俺は村上が好きなんだ」


グイッと引っ張られ簡単に円堂の腕の中におさまってしまう。
あ、円堂すごくドキドキいってる……。


「私なんかでいいの…?」

「なんかじゃない!村上だからこそだよ!」

「ほんとに?」

「ほんとだ」

「わ、たしも…好き、円堂が好きだよ…」


どっどっどっどっ


今までにないくらい心臓が早い。もしかしたらこれは夢なのかもしれない。


「村上、」

「はい?」


抱きしめられていた腕は離れ、肩を掴まれるとジッと見つめ合った


「好きだ、好きなんだ!だから、俺と付き合ってください!!」


勢いよく頭を下げ手を差し出してくる

なんだか凄く円堂らしくて…。クスリと笑った


「お願いします」


そう言って差し出された手を握る。

すると円堂はガバッと顔をあげ、ものすごい笑顔でよっしゃー!!と叫び私を抱き上げた


「わわっ…!」

「本当なんだな、村上!」

「う、うん」

「ははっ、もう離さないからなー!」


そのまま私を抱き上げた状態でグルグルと回る

あぶない…!


でも、私は今世界で一番幸せかもしれない


はじめは円堂が嫌いだった私。でも、どんなに無視しようと冷たくしようと円堂は私を構った。
それがウザったくて仕方がなかったけど、次第に心地の良いものに感じていた

今では逆に円堂を求めている

それに、今まで居なかったも同然だった私に話しかけてくれる人が増えたこと

円堂はすごい人だ。それが彼の良い所。
周りの人達を引き付け、私の心境をも変え更には惹かれた

私もこんな人になりたいと、憧れと恋心

円堂と出会えた事に感謝感謝大感謝




「よし!こうなったら皆に報告だ!」

「えっ、ちょ…?!」

「ほら行くぞ村上!」

「ま、まって円堂ーっ」




end...




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