「それで村上がさあ」

「今日村上と」

「村上のやつったら」



最近のコイツは口を開けば村上。何をしてても村上。いつでも村上。

俺は遠目からしか見たことはないが、サッカーが恋人のような円堂をここまでさせるとはどれ程のやつなんだろう


しかし村上村上ととにかくうるさい。今も惚気ねように長々と話している。

たしか豪炎寺の話しでは村上とやらは円堂が嫌いらしいと聞いたが……謎である。


「お前は本当に村上が好きだな」

「あぁ!大好きだ!」

「ほう…それはlikeか、それともloveか?」





「らいくか、らぶ……?」

「ああそうだ。友達として好きなのか、異性として好きなのか」



鬼道に問われ、思考回路が急停止する。確かに村上は特別な存在であった。

しかしそれがlikeかloveかと聞かれると正直分からないっていうのが答えだ

自分で言うのもなんだけど、今までは本当にサッカーにしか興味が無かったから恋愛というものが分からないのだ



「わか、らない……」

「フッ……そうだろうとは思ったが。更に聞くが円堂は村上に対して変な感情になったことはないか?」


そうだな、例えるなら一緒にいたり考えるだけでドキドキしたり、違う異性といると胸が痛んだり、守ってやりたいだとか側にいてやりたいだとか。


「あ、ある、かもしれない」


そう、俺には少し心当たりがあった。前に村上と豪炎寺が一緒に居た時、胸の辺りがキリキリとすごく痛んだこと。
村上をもっと笑わせたいと思った事を鬼道に話す


すると鬼道は何かを確信したかのように頷いた。


「円堂、お前は村上が好きなんだろう」

「それはさっきも……」

「そうじゃない。異性として、恋愛感情で好きなんだ」

「は?」

「それは立派な恋だ」

「恋……」



恋、なんて。俺は一緒縁の無いものだと思っていた。しかしその考えは今打ち砕かれたのだ



俺は、村上が好きなのか…

それは俺の中でなんとなくしっくりきた


「村上が、好き……」

「フッ…円堂にもやっと春が来たか」



その瞬間、俺の中でわなわなと何かが込み上げる。ものすごく叫びたい

これが好きという気持ちなのだ

サッカーとも違う好き


自覚した途端、村上に会いたくて会いたく仕方がなくなった


会って思いっきり抱きしめて好きだと伝えたい



初めというものたまたま図書室に気になる女の子が居るから会いに行ってみれば嫌いだと罵られ、それでもしつこく付き纏ったかいがあったというものだろう

あんなにトゲトゲしいかった村上とも今じゃ普通に会話すらできているのだ

たまにキツイ言葉が返ってくるけどそれも彼女なのだろう。





(すべてが)(愛おしくてたまらない)




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