私はモブ。脇役にすらなれないモブ。
家でもモブ
クラスでもモブ
仲が良いと思ってたあの子の中でもモブ
いつも忘れられてる、空気のような、背景な存在
あれ、居たの?
とよく言われる。
先生がよく言う、「それじゃあ二人組作ってください」にはよく苦しめられる。
私は放課後、いつも図書室で課題をしてから読書をするのが日課だ。
図書室はまったくと言って良い程人が来ないから凄く落ち着く。
私の学校での唯一の居場所
でも最近気づいたの。
この図書室の、私の特等席からは、サッカーグラウンドがよく見える。
あそこの、オレンジ色のバンダナをつけている、彼。見るからに、よく周りに人が集まっている。すごく輝いていた。何かの物語の主役のような存在。
乙女な心だったら、ここで憧れだの、心惹かれた、惚れただのという話になるのだろうか。
私は、いっつも笑顔を絶やさず輝いていて周りに人があつまってくる、そんな彼が憎くて憎くてたまらなかった。
まさか彼も、話した事もない、名前も知らない、そんな奴に憎まれてるだなんて思いもしないだろう。
ほら、今だって彼は笑顔だ。ウザい。ウザいウザいウザい。
そんなイラつきを隠す様に意識を本に集中させた。
今日は何だか凄くイラつく。なんでだろう。大好きな本を読んでも、その内容がなんだか馬鹿馬鹿しく思えて。パタンと本を閉じた時
──ガチャ
えっ、誰か来た……?
ここはめったに人が来ないのに……。
内心少し焦り、今日はとっとと帰ってしまおうと椅子からたった瞬間に入って来たであろう人がこちらに来て話しかけてきた。
「なぁ、」
何よ、と思い振り返り声の主を見る。
思わず目を見開いた
だってそこにいたのは、私が憎くて憎くてたまらない、オレンジ色のバンダナをした彼だったのだから。
「……っ、何」
「どうしていつも図書室に居るんだ?」
いきなり来て何を言い出すのだろうか。
眉間に軽くシワをよせ、なるべく冷たく返す。
「どうして。」
「えっと……いっつもグラウンドから見えててさ、気になったんだ」
そう言うと彼は少し照れたように、軽く苦笑いしながらポリポリと頬をかく
「それでここに来たの?」
「そうなんだ!ずっと話したいと思ってて。俺、円堂守!君の名前は───」
「私、貴方の事嫌い。」
「えっ……」
「それじゃ。」
言葉を吐き捨てるように言うと、少々荒々しくカバンを引っつかんみ図書室を後にした。
すれ違いざまに横目で見た彼は、よく分からない表情をしていた。
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