あれから少しして、かずほの退院が許された。

退院祝いで外食……と行きたい所だが、生憎まだギプスは外れないのでそのまま家に帰ることにした




「ここが俺達の住んでる家だ」

「結構綺麗ですね」

「片付けたからな」

「あ、この写真……」


気になったのか、かずほはカラーボックスの上に置いてあった1つの写真立てを取った


「あぁ、これは去年のかずほの誕生日の時のだよ」

「へえ……かずほさん、ていうか私だけど…とても幸せそうです」

「かずほはサプライズが好きだから、とても喜んでたんだ。ほら、このネックレスがその時のプレゼント」

「あ、それ今もですけど、ずっと付けてますよ。なんだか凄く大切な気がして……こういうことだったんですね」


かずほはふわりと微笑むと、少しもじもじさせながら「もっと昔の思い出話を沢山聞きたいです」と控えめに言ってきた


「それじゃあ、まず俺達が出会った時の話しをしようか」


飲み物と軽くつまめるお菓子を用意してソファーに並んで座り、アルバムを広げた





俺達が出会ったのは中学2年生の時だった。厳密に言えば1年の時だが直接話したのはあの時が初めてだった


当時俺は、陸上部だったがサッカー部に助っ人でいた時だ。

マネージャーの木野と仲がよかったかずほは、たまにサッカー部に顔を出してマネージャーの手伝いをしていた


───……


「お握りですよー」

「大山、お握り貰うな」

「おぉ歌丸クン!お疲れ様だよー。いっぱい食べてくれたまへ!」

「風丸な。それじゃ落語家になっちゃうだろ?」

「ありゃ、そうだったかね!いやー風丸くんは私の名前覚えてたのにねーお恥ずかしい」

「まあ同じクラスだったしな」



……───



これが俺達の初めての会話だ。かずほは明るくて元気で、天真爛漫な印象を受けたのを覚えている



それから俺達は中学を卒業し、高校へとあがった。とくにメンツは変わることなく、サッカー部へと入部した。高校ではかずほも正式にサッカー部のマネージャーとなった


そして、高校3年の大会決勝前日。


「明日はいよいよ決勝だね」

「ああ。そしてこの大会が終われば俺達3年は引退だ」

「…なんか、寂しくなるね」

「そうだな……。あの、さ」

「うん?」

「この大会で優勝したら、話したいことがあるんだ」

「ん、わかった。絶対優勝するんだぞ!」

「ふ、当たり前だろ?」


そして俺達は大会決勝で優勝した。すごく熱く、盛り上がり、ギリギリの戦いだった。最後の最後でこんな熱い試合が出来たことにみんな感動泣きをした

その後行われた打ち上げが終わると、俺はかずほを呼び出した。


「部活、本当にお疲れ様。優勝出来て…よかったねっ…!も、また涙が…っ」

「おいおいまたか?」

なんておかしそうに笑ってやると「もう泣かないっ」と頬を膨らませた

それがとても可愛くて、頭を撫でてやった。
それから俺は緊張ぎみに「あのさ、」と切り出す。それを読み取ったのかかずほも緊張の面持ちになる

手の平がじわりと湿るのを感じ、ごまかすようにギュッと拳をつくる


「大山、俺は大山が好きだ!よかったら付き合ってくれないか?」


俺は真剣に、まっすぐかずほの瞳をみつめた。
かずほの瞳はだんだんと見開いていき、赤く染まっていく

自分もなんだか恥ずかしくなって顔に集まる熱を感じつつ、ジャリッと地面を踏み直した

「わ、あ、わ、私も!私も風丸くん好きっ!!」


胸の前でギュッと手を握るかずほは緊張してか声がとても大きかった
それが何だか可笑しくて笑った記憶がある






「とまあ、これが俺たちの付き合い始める前の話し」

「すごい、素敵です!なんだか胸がポカポカしました」

「なんか、恥ずかしいな」

はは、と笑ってごまかしてはみたものの、多分顔は赤くなっているのだろう

案の定かずほが「風丸さん赤くなってますよ?」とおちょくって来た。どうやらこういう所も変わってはいないらしい


album
(ふふっ、風丸さんなんだか可愛いです)(あんまり嬉しくないぞ)



( もどる しおり )




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -