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「何故同じ学園内の生徒ばかりを素材に選んだのかな?」
「全寮制女子学校というこの学園の教育方針を槙島先生はどうお考えですか?」

二人の男女の話し声が録音された音声はそこで途切れた。

一人は今回の事件の容疑者王陵璃華子


「あと一歩でしたね。
王陵璃華子は指名手配されています、
時間の問題です」
「消えるな」

その一言を発した後、宜野座に呼ばれその場を去ってしまった狡噛
美術室の中に朱と名奈だけが残る。

「どういうことかな?」
『三年前標本事件を起こした藤間も公安局が保護したはいいんですけど、その後が行方知れずで…』
「それって!」
『多分今回もきっと…』

消えるだろう、名奈はその台詞を飲み込んだ。

消えるというのは正確には正しくないかもしれない。
恐らく消えるのではなく、消されるのだ
もう一人の声の主、槙島聖護によって。





そんな考え事をしている中、ふと隣で黙ってしまった朱を見る。

そわそわとしながら手を小さく動かしている。
珍しく落ち着きの鈍っている朱に名奈は声をかける。

『朱ちゃん?』
「!」
『どうしたんですか?』
「あ…えっと……名奈ちゃんに聞きたい事があるん、だけど…」
『どうぞ、なんなりと聞いて下さい』
「いや、あの…そんな軽く聞いて良いのかな…」

徐々に小さくなっていく朱の声。
それに伴い顔も下を向いてしまい表情が伺えない。




lelelele…


『「!」』

突然デバイスから鳴り響く音。

名奈が慌てて確認すると、デバイスのホロから着信のマークが上がっていた。

"CALL 病院"

その文字に思わず名奈は眉を顰める。
そうしてそのまま電話を切る。

「良かったの?病院からだったけど…」
『いいんです。多分葬儀関係の事ですから』
「だったら尚更!」
『私なんかに見送られるなんて弟も嫌でしょうし』

はっきりと言いきる名奈に朱は言詰まる事しか出来ない。

自虐的な、哀しい微笑を貼り付ける彼女にこれ以上踏み込んでいいのか。
そんな想いが朱の頭を支配する。
しかしほんの些事しかない好奇心は朱を唆かす。



「名奈ちゃんが人を殺したことがあるって本当?」


無意識に零れ落ちる言葉。

「!」

咄嗟に口を押さえるが既に放った言葉は取り返しがつかない。恐る恐る名奈を見る。



「ご、ごめんね。何か無神経なこと聞いちゃって…」
『……』
「別に軽蔑してるとか、そういうんじゃなくて…」
『……』
「~~~本当にごめんなさ−−」
『朱ちゃん』

凛とした声が朱の謝罪を遮る。
先程とは逆で、今度は名奈が頭を下げて視線を逸らす。


『狡噛さんから聞いたんですか?』
「うん…そうです」

意図せず口調が改まってしまう朱。
どうしたものかと必死に頭を回転させる


『クスクス…』
「!?」


隣から聞こえてくる堪えたような笑い声
思わず眼を見開く。
すると名奈は一通り笑いきったのか『はぁ…』と、一息つく。

『そんなに慌てなくても誰も怒ってませんよ』
「名奈ちゃん、」
『それに残念ながら、さっきの質問には答えられないんです』
「え…?」




『私、四年以上前の記憶が無いんです』






(エンプティ・ポケット)
(其処に覗く価値はあるの?)

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