code 6

機械音のなる音が聞こえて名奈の目は覚める
昨晩の暴走により気絶していた名奈は早朝には目を覚ましていた。
しかし久し振りに感じた病室独特の冷たく無機質な空気に言い知れぬ不安に襲われ思わず狡噛の病室を訪れた。
そして看病をしていたのだがいつの間にか眠っていたらしい。
「あれっ…?」

名奈はまだ重い瞼を擦りながら警報に耳を傾ける。
何処かでエリアストレスが上昇しているらしい

昨日の今日でこれとはついていないにも程がある。自分はシフト明けだから戻らなくても大丈夫だが今日の宿直は朱である。
征陸がついているから特に問題は無い筈だが一応狡噛も今日の当番である。彼の穴を埋めに戻るかと考えていたところ、目を覚ましていた狡噛と目があう

「狡噛さん気分はどうですか?」
「……」

こちらをしっかり見つめ返して来るところを見ると意識はしっかり有るようだが、声が出ないらしく狡噛との会話は出来そうにない

静かな病室に狡噛の脈を測り続ける音だけが鳴り響く。
そっと狡噛の手に触れると微力ながら握り返してくる

普段の彼からは信じられないくらい弱々しい力に名奈は苦しげな顔をする。

「狡噛さんお願いです、無茶だけはしないで下さい」
「……。」

彼にそんなことを願っても無駄だという事は名奈も重々理解している。
彼には成すべきことがありその為にもこんな所で死ぬ訳にはいかないという事も…

澄んだ水色の瞳と漆黒の瞳が交わる。

互いの瞳にあるのは相手を狂おしい程想いながらも、それが伝わらないというもどかしさを含む"熱"
名奈はそれに惹かれる様に立ち上がる。座っていた椅子が立ち上がった反動で後ろに下がる音がするが今の二人には聞こえていない

名奈がベットに手を付きながら狡噛の顔の上にかがもうとすると…

「名奈、あんたそこで何やってるの?」
「「!?」」
「イチャつくのは構わないけど検査終わってからにしなさい」

病室に取り付けてあるモニターから唐之杜の声がする
一気に冷静になった名奈の顔はみるみるうちに赤くなる

端から見れば名奈が狡噛に迫っているようにしか見えない光景を他人に見られた
恥ずかしくてたまらなくなり急いで病室を出る
本当に穴があったら入りたい気分だ。

擦れ違う人全員に不思議な顔をされるが名奈はどうしようも出来ずただ総合分析室へと走った

#

「唐之杜さん、何してくれるんですか!!」
「あら、名奈。もしかして邪魔しちゃった?」
「~~そういう事言ってないです!」

総合分析室に着いた途端名奈は唐之杜に抗議を始める
もともと自分は怒りっぽくないのだが今回ばかりは別だ

未だに冷めない熱は、自分から狡噛に迫った羞恥からくるのか
それとも怒気からくるものなのか判断がつかなかった。

「~~//////」
「まぁ、少し落ち着きなさい
これから大事な話するんだから」
そう言って真剣な顔をしながらタブレットをいじり始める唐之杜に名奈も背筋を伸ばす

しばらくすると画面に名奈の最新のサイコパス診断の結果が映される
その結果を見て思わず顔を顰める。
前回の検査結果と比較すると明らかに犯罪係数が上昇しているのだ。

その事を認知した途端、女に触れた時の感覚が蘇ってきた
あの泥沼に全てを絡め取られるような、何かが己の理性を奪い取る感覚が…

「あーやっぱり悪くなってるわ」
「!」
沈みかけていた意識が唐之杜の声で浮き上がる

「あの、鬼監視官に言われなかった? 気をつけろって」
「うっ……」
確かに宜野座にはしっかり忠告されていた。"感化されるな"と…
それを怠って起きた今回の暴走の責任は完全に自分にある

全く以て情けない話だ
いつからこんなに自己管理が出来なくなってしまったのだろう

「…すいません迂闊でした」
「まぁ、怒ってる訳じゃないからそんなにしょんぼりしないの」

そう言って唐之杜は名奈の頭を撫でる。こんな風に誰かに頭を撫でられる事は珍しい。思わず嬉しくなった名奈は暫くその感覚に身を任せている。
するとふとある事を思い出す

「あの…気になってたんですどどうしてアラートが鳴らなかったんでしょうか?」
「うーん、一応検査はした
けど不備は無かったのよ…」
ほら、と言いながら唐之杜は昨晩のリストバンドのデータを映し出す。

確かに他人のサイコパスは感知されてい
ない。

(じゃあ原因は何なのだろう…)

思い当たる可能性としては回線の割り込み
しかしその場合目的が一切不明である。何の為にリストバンドの回線に割り込んだか、その理由が…

「念のため新品にしといたわよ」
「わ、ありがとうございます」

ぼうっとしていた名奈は新しいリストバンドを投げられ慌ててそれを受け取る

見た目は別段何か変わっている様子は無い、新しい機能でも付いたのだろうかと、穴が空く程見つめていると正面を向いた唐之杜から声がかかる

「それ新品って言ってもセンサーの働く範囲2~3m広げただけだから、今まで通りちゃんと気を付けなさいよ〜。」
「! ありがとうございます」

こちらを向かず投げやりに言っているがあれが唐之杜なりの優しさなのだ
改めて周りから支えられていると実感した名奈は身を引き締めるような想いに駆られる。

もう一度御礼を言おうとするが
二言目に唐之杜から放たれた言葉に思わずは固まる

「もう戻ってイイわよ。
慎也クンと思う存分いちゃついてなさい」
「っ! ///////だから違いますって」

どうやら誤解は解けてないらしいかった

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