code 23

帰ってすぐに情報の整理にあたる筈だったのだが丁度サイコパスの定期検診がぶつかってしまった結果名奈は今、唐之杜のところにいた。


「うん、乱れてないわね犯罪係数」
『本当ですか?良かった』

検診の為に開けていたワイシャツのボタンを閉じる。

しかしその動作の鈍いこと

ボタンを掛け違えるわ、それに気付かないわ…
明らかに何か悩んでいるというのが空気からも察せられた。


思わず呆れた唐之杜は溜息を尽きながら名奈を振り向いた


「何かあった?」
『え?』
「おねぇさんに言ってご覧」


すると名奈は一瞬迷った素ぶりを見せた後にデバイスを操作し始める。
暫くして浮かんできたのは一人の写真。

唐之杜も覗き込む様に体を名奈に近付ける


『彼女が今回の事件の被害者なんです』


葛原沙月

渋谷区代官山の公園で発見されたバラバラ死体の少女の名前である。
全寮制の女子高等教育機関"桜霜学園"の生徒、一週間前から行方不明になっていた事が後の調査で発覚したのだ。


「あれ?桜霜学園って確か…」
『標本事件の容疑者、藤間幸三郎の勤務先です』


小さく呟かれた名前。
その声のトーンに唐之杜は名奈がどれだけその名を忌まわしいと感じているかを意図せず感じ取った。

その一言以来声黙り込んでデバイスを見続ける名奈



(そういう事ね…)


ようは狡噛に合わせる顔がないのだ。

遺体を侵食していた特殊な薬剤は三年前に使われた薬品と同じなのだ。
ここまで手掛かりがピッタリと重なっている事件に狡噛が関与したくない訳がない。


そしてそれを理解している名奈だからこそ変に気を遣ってしまっている。



(この子ったら…)



唐之杜は複雑そうな顔で再度名奈の顔を見つめる。


今回の件がもし当たりで狡噛の追っている人物に近付く事になれば彼はまた一歩沼の中へと足を踏み入れる。




黒くて
どこまでも深くて
一度入ったら全身を絡めとり纏わり付くような沼に…




「名奈」
『!』
「あんた、気にしすぎ」


唐之杜の唐突な言葉に名奈は思わず目を見開く。
そんな名奈に唐之杜はふっと笑みを零す。


「もし慎也クンがサイコパスを濁らせても慎也クンはあんたを責めないわよ」


「そんなことする彼じゃないってあんたが一番わかってるでしょ?」
『…はい』
「名奈の好きな慎也クンを信じてあげなさい」



そう言って頭を撫でる唐之杜。
そんな彼女に名奈は肩をすぼめて下を向くしか出来なかった。

自分を励ますあの表情は大人のものだった。
悩み事を一瞬で見抜かれたこともそうだが、やはり彼女には敵わない。




軽い口調で話すがそれらはためになる事ばかりなのだから。

『唐之杜さんは頼りになりますね』

名奈がそう言うと唐之杜は驚いて目を見開く。
暫くの間硬直した後、突然口元を緩めるととんでもない事を言い始める。


「あら、名奈ったらおだてるのが上手いのね」
『?』
「嬉しいからお節介ついでに慎也クンに電話繋いであげる」
『わ、待って!
やめて下さい』




(レセフェール)
(為すに任せよ)

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