code 21
--am5:00--
まだ人々が活動を始めるには少し早い時間。
外の喧騒もなく、静かな朝というのがしっくりくる雰囲気。
もっとも執行官の宿舎までその喧騒が聞こえるかどうかはまた別の話である。
名奈は自室のベットでとある資料を眺めていた。
{ユーストレス欠乏性脳梗塞}
サイコパス診断が向上しストレスの感覚が麻痺し過ぎ、自律神経が自らの機能を見失い生命活動が維持出来なくなる病気である。
「先程弟さんがお亡くなりになられて
その御報告をと…」
『そうですか』四年前からサイコパスが濁る事を極端に恐れた弟は異様なまでにメンタルケアの道具を使用するようになった。
しかしあの惨劇を齢13で体験したのだ。
精神がボロボロになったってなんら不思議はない。
そっと資料が手から滑り落ちる
すると重力に従って紙はパラパラと音を立てながら床に散らばっていく。
『拾わなきゃ…』
落ちた資料を拾いながら名奈は改めてそれを見た。
この資料が公の場で見られる事はないだろう。
あくまでこの病気は原因不明の心不全として片付けられている
全てをシュビラに依存している今、シュビラの不備は政府が隠さなければならない。
ふと先程の会話が頭を過る。
「弟さん最後まで頑張ってたから。
お姉さんのこと心配していたわよ」
『ありがとうございます。その言葉だけでも救われます』(嘘だよね)
何も気付かず、何も語らず、何も考えない。
そんなシュビラに生かされる人形に誰かを気にかける思考などとうに枯れているのだから。
時折カサリとなる音が、まるで自分の考えに呼応しているようだった。
(今は真実も飲みこんで)
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