code 5

暗闇に一筋の光がさした後、視界が明るくなっていく
しかしその景色は僅かにぼやけていて己の視界に映る物の正しい姿を見せてくれない

狡噛は真っ白な天井に焦点を合わせる
するとぼやけていた視界がハッキリしていく

体を動かそうと試すが動かない
何故かと考えるがすぐに昨晩のことを思い出した
自分は人質の女を撃とうとしたが、あの新任監視官に撃たれたのだ

気に入らないなら撃てとは言ったが、まさかそんな状況になるとは思ってもいなかった。
幸か不幸か撃たれたのはパラライザーだったため命に別状はないが、体は完全に麻痺している

(この調子だと今日一日は動けないな)

そんな事を思い視線を横に向ける。

(!)

するとそこにはベットに突っ伏している名奈がいた
一瞬どうしてここで寝ているのだろうと思ったが大方自分を看病している間に寝てしまったのだろう。

そんな名奈に愛おしさを感じた狡噛は手を伸ばそうとするが、やはり体は動かない

名奈は甘やかされる事に抵抗はないが、甘える事に対しては異常なまでに嫌悪を抱く傾向にあるのだ。
だからこそ狡噛は名奈を深く気にかけるし、それが己の役目だと感じている

しかし今の自分にはそれすら出来ない。
(俺はいつもこいつに何もしてやれない…)
己の不甲斐無さに呆れながら仕方なく狡噛はもう一度眠りに就いた

#
朱は総合分析室を訪れていた
狡噛の容態がここにくれば分かると言われたのだ
分析官の唐之杜によれば朱が撃ったパラライザーは狡噛の脊髄に直撃してしまい狡噛は今日一日は動けない状態なのだ

自分のやってしまった事の重大さに画面を見続ける
すると何かに気付いた朱は画面を指差す
「あの、あれって雨宮さんですか?」
突然朱の口から紡がれた名前に唐之杜は驚いて画面を見る
画面の端、狡噛が寝ているベットに突っ伏している小さな影が見える

「あの子、あんな所で何やってるのかしら。別室に入れられてたハズなのに…」
「え、雨宮さんもあの後病室に?」
「えぇ、あの子久しぶりに暴走しちゃったんでしょ。それでそのまま検査って事で病室に押し込まれたのよ。見つかったら大騒ぎね」

自分から話題を振っといてなんだが出来れば名奈の話はしたくなかった。
あの時目があった、あの表情が頭にこびり付いて取れないのだ
彼女の虚ろだった目は自分を見ていたとは思えない。

名奈が何を考えて行動をおこしたか本人に聞けば分かるだろうが、正直顔を合わせるのが怖い
のだ
(一体どうすれば…)

顔だけでも見ていくかと唐之杜に尋ねられた朱は下を向いてそれを遠慮する。
今、狡噛と名奈に会っても何も話せないだろうと思う

朱の心を巣食っている悩みは確実に膨らんでいっていた


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